結局、政府の新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言はいつまで続くのか。当面、5月6日までとされている期限を延長するのかどうかについて、政府内での動きが慌ただしくなっているようだ。宣言の発令から2週間、22日に開かれた政府の専門家会議では、目標としていた「接触の8割減」は達成できていないとの見解が示された。同日開かれた記者会見で、同会議委員で北海道大学大学院医学研究院教授の西浦博氏は「今すぐにこれまでと同じ生活は帰ってこない。向こう1年間は付き合って行かないといけない」と対策が長期化する見通しを示した。「来月6日で一区切り」というわけにはいかない情勢だ。
感染者減少の期間伸びる→感染者がゼロになるわけではない
22日の記者会見で配布された専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、一連の緊急事態宣言が奏功した場合の見通しを次のように説明している。
「人と人との接触機会を8割削減するという目標は、単に2次感染を減少させるために必要となるだけでなく、短期間で(例えば、8割という劇的な削減であれば、緊急事態宣言後 15 日間で)感染者数が十分な程度減少するためにも必要である。
接触機会の8割削減が達成されている場合、緊急事態宣言後おおよそ1か月で確定患者データの十分な減少が観察可能となる。他方、例えば、65%の接触の削減であるとすると、仮に新規感染者数が減少に転じるとしても、それが十分に新規感染者数を減少させるためには更に時間を要する。
なお、8割削減の達成ができた場合には、1 カ月後には感染者数が限定的となり、より効果的なクラスター対策や『3つの密』の回避を中心とした行動変容で感染を制御する方法が一つの選択肢となり得る。不十分な削減では感染者を減少させる期間が更に延びかねないことを十分に理解した上で、できるだけ早期に劇的な接触行動の削減を行うことが求められる」
仮に8割接触削減が成功し、感染者数が限定的になったとしても、クラスター発生の可能性がゼロになるわけではなく、行政や医療機関による感染者対応がしやすくなるということのようだ。医療現場の崩壊という最悪の事態を回避しなければならないことに今後も変わりはなく、程度の差はあれ市民生活も従前どおり3密の回避など各種自粛の継続が見込まれる。
宣言の期限を迎えても、なんらかの自粛要請は継続か
西浦教授の発言に関して、厚生労働省の関係者は次のように語る。
「北大の西浦教授の『今すぐにこれまでの~』発言はまさにそのことで、6日に期限を迎えたからといって、翌日から満員電車で通勤したり、混雑する居酒屋で飲み会を開いたり、自由に行楽に行ったりできるということではありません。
すぐにリバウンドして感染者数が増加してしまう可能性があるからです。緊急事態宣言の期限延長の是非に関しては、政治判断となりますが、どのような形になるにしても3密の回避や一定程度の営業自粛の継続はお願いし続けることになるとは思います」
一方で与党関係者も国会内の混乱を指摘する。
「メディアの報道の問題なのか、それとも厚労省や専門家会議の説明不足なのかわかりませんが、自民、公明両党の議員の中には『5月6日まで我慢すれば良い』という感覚で各所属組織や支援者に説明していた議員がいたようで、ここにきて期間延長に難色を示しているようです。
当初から厚労省や日本医師会と関係の深い議員からは『本当に5月6日までという期限を切って大丈夫なのか』という疑問も出ていたのですが、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長らが主張する『1年以上の五輪開催延期はない』とするご意見や経済界からの強い働きかけもあって、なんらかの期限を設けないわけにはいかなかったというのが実情です。仮に8割の接触削減が達成されても、引き続き医療現場の崩壊を起こさないようにしなければなりません。宣言の期間を延長できないにしても、実情を踏まえれば何らかの形で国民の皆さんへの自粛活動を要請し続ける必要があるでしょう。
はっきりとしたことがわからないまでも、緊急事態宣言から収束まで政府方針の大まかなロードマップを更新することが必要だと思います」
自粛の努力を重ねてやっと期限を迎えた瞬間、「では、その調子であと1年がんばろう」と言われるのは精神的にこたえる。政府が長期的な見通しを立てずに、闇雲に国民の努力を煽り続けるのは無理筋ではないだろうか。
(文=編集部)