例えば、私(江端)を題材とした「江端物語」という架空の創作をする場合に、その物語には、当然私を模したキャラクターが登場することになります。しかし、その私のキャラクターは「思想又は感情を創作的に表現したもの」にはならないでしょう。
●キャラクターの「設定」と「絵」の違い
さて、これを整理してみますと、
(1)同人誌のストーリーにはオリジナル性があり、原作をコピーしたものではない
(2)同人誌に登場するキャラクター(の設定)には著作性はない
ということになります。
二次的著作物とは、乱暴にいうと「原著作物を『取り込んだ』著作物」を指すのですから、「同人誌=二次的著作物」の理屈を導くのは無理ではないか、と思うのです。
「え! 同人誌は、二次的著作物じゃないの? それでは、著作権侵害にはならないね! やったー!」と思われるかもしれませんが、残念ながらそうではなく、もっと悪い結論が導き出せるのです。
確かに、キャラクターの「設定」には著作権は発生しないかもしれませんが、キャラクターを「絵」にしたものには、当然に著作権が発生します(絵画の著作物)。例えば、「ドラえもん」であれば、これまで連載が続いてきたドラえもんのすべてのポーズ、動き、表情に、著作物性が認められます。
では、同人誌をつくっている人は、何をしていることになるか?
アニメやマンガの原作の絵を「切り取って」「貼りつけて」いる、すなわち、原作を「コピー&ペースト(コピペ)」して同人誌をつくっている、と解釈されます。
するとどうなるか? 二次的著作物の認定などという面倒なことはふっとばして、ダイレクトに複製権侵害(第21条)が成立してしまいます。つまり「同人誌=二次的著作物」ではなく、「同人誌=違法コピー物」で、アウトです。直撃です。
原作者や版権元から差し止め(やめろ!)、損害賠償(金払え!)と言われるだけでなく、国家までもがしゃしゃり出て、お仕置き(刑事罰)をしてくる可能性があります。具体的には、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれらを併科する(著作権法119条1項)」という、民法の中でもかなり厳しい内容となっています。
●同人誌の逃げ道とは?
では、同人誌は複製権侵害から、どうやっても逃れようがないのでしょうか?
私は、同人誌の中でも、ある特定の分野に限っては、「逃げ道」があると考えているのです。
「薄い本」です。
「薄い本」とは、マンガやアニメなどの、原作、元ネタがある創作物のパロディを記載した同人誌であって、主に性的な娯楽要素を扱う分野の同人誌、いわゆる「エロ同人本」をいいます。
唯一、複製権侵害を免れる方法があるとすれば、「アニメやマンガのキャラクターの絵を使っているが、原作のコピーであるとは絶対に言えないような絵だけで構成されている」と主張できればよいはずです。理論立てとしては、次のような感じになるでしょうか。
【Step.1】
アニメやマンガのキャラクターが、「あんな淫らなことしている絵」や、「こんなイヤらしいことしている絵」は、原作には絶対に登場しない。