神戸山口組の中核組織である五代目山健組。その山健組内の保守本流を含む多くの勢力が、神戸山口組から離脱するという情報が流れてから数日が経った。しかしその後、離脱が正式決定したという話は聞こえてこない。だからといって、混乱が終息したということでもないようだ。
そんななか、山健組は7月11日に引き続き14日にも、兵庫県高砂市内で会合を開催した。地元関係者によれば、会場の周辺のいたるところに幹部送迎用の山健組系車両が待機しており、山健組系組員らであふれかえっていたという。
山健組系組長や組幹部が多数出席したと思われる会合は数時間にも及んだようだが、最終的には、今後の去就についての結論にはいたらなかったといわれている。
「この会合で、五代目山健組が本当に神戸山口組を離脱するかどうかが決まるのではないかと見られていた。そのため、獄中の中田浩司組長(五代目山健組組長)の意を汲んで神戸山口組離脱を主張すると見られていた最高幹部らも、この会合に出席している。だが、結論は出なかった。当代である中田組長が獄中にいるだけでなく、接見禁止をつけられているため、外部との連絡が弁護士を通じてしかできない状況だ。そんななか、中田組長の本当の意思を直接聞いた人間がいないというのが、結論が出ない要因のひとつかもしれない。こうした状態はしばらく続くのではないか」(業界関係者)
確かに、塀の中と外では、神戸山口組や山健組をめぐる情報に対する温度差があるだろう。中田組長の耳に入っている情報も限定的な可能性があるし、その中田組長から発せられた言葉も、現在は弁護人伝いであり、直接的な意思の疎通は困難な状態だ。一節には、中田組長が神戸山口組の井上邦雄組長への不信感の大きさを理由に同組からの離脱を指示したというが、本当にそう明言したのか。また、本当に正確な情報を耳にした上でそのような判断にいたったのかなど、組織関係者からすれば疑問をさしはさむ余地があるのかもしれない。
そんな状況だけに、山健組が神戸山口組を離脱するのか、もしくは中田組長派といわれる一部の勢力だけが神戸山口組を離脱するのか、それとも最終的には元サヤに収まり、五代目山健組として神戸山口組で活動していくのか、結論に至るまでには時間を要することも十分に考えられるのではないだろうか。
こうした状況に対して、他団体はどのように見ているのか。ある関係者はこのような見解を示している。
「山健組が揺れ動いているのは間違いないだろう。それはすなわち、神戸山口組全体に影響を及ぼすことになる。ただ、本当に神戸山口組から山健組が離脱するとしても、一部の勢力としてではなく、組織全体で抜けなければ、長年、山口組内で存在感を示し、神戸山口組結成の牽引役にもなった山健組の絶大な影響力は維持できないのではないか。それだけに分裂は避けたいのだろうが、トップ不在のなかでは、いくら会合を開き、長時間かけても、すぐに結論にはいたらないのではないか」
突如浮上した山健組の神戸山口組離脱問題だが、それが長期化しているところを見れば、紆余曲折の末に神戸山口組に留まる可能性も出てきたともいえる。
絆會の状況も二転三転か
一方で、その山健組から2017年に離脱し、新たな勢力を立ち上げて独自の組織運営を行ってきた絆會(旧称・任侠山口組)にもこんな噂が錯綜し始めたという。実話誌記者は語る。
「一部新聞などでも取り沙汰されていましたが、絆會は脱反社を目指し、近々解散するのではないかと見られていました。これまでも何度かそうした噂が浮上しては立ち消えになっていたんですが、今回の解散説については、捜査関係者でさえ間違いないのではないかと見ていました。それがここにきて、解散を撤回、もしくは保留したのではないかと囁かれ始めています。タイミングがタイミングだけに、山健組問題となんらかの関係があるのかもしれません。山健組の一部勢力との合流や、絆會の主だった勢力による六代目山口組への移籍など、さまざまな情報が流れている段階です」
神戸山口組や山健組においても、そして絆會においても、今後どのような局面を迎えるのかは、正式発表が出されるまでは予断を許さない。ただ、六代目山口組と袂を分かった勢力の状況にこうした変化が生じているのは、六代目山口組・髙山清司若頭が去年秋に府中刑務所から出所してきたことと無関係ではないだろう。
「六代目山口組サイドでは、髙山若頭が出てくれば分裂騒動は終焉するといわれていた。それだけ、山口組全体に与える影響力が絶大だということだろう。実際に髙山若頭が出所してまだ1年も経っていないというのに、分裂問題を取り巻く環境は大きく変わってきている。任侠山口組は山口組の看板を下ろして絆會となり、神戸山口組からは六代目山口組に復帰する勢力が相次いでいる。挙げ句に山健組でのこの内紛。髙山体制下の六代目山口組の強固さが、対峙してきた勢力に影響を与えているのは間違いないだろう」(捜査関係者)
捜査関係者らですら「その影響力には特別なものがある」という髙山若頭を前に、分裂騒動は収束に向けて大きく変貌を遂げている……当局の見立てもそのようなもののようだ。
まもなく6年目に突入する山口組分裂騒動は、今後どのような展開を見せていくのだろうか。