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わいせつで懲戒処分の教員、3年で再採用も、拒否難しく…データ検索40年に延長に現場困惑

文=編集部
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「Getty Images」より

 文部科学省は15日、児童生徒に対するわいせつ行為などで懲戒免職となった教員のデータを各都道府県教育委員会の内部で検索できるツールについて、検索可能な期間を3年から40年に延長すると発表した。このツールはすでに各地の教育委員会で使用されていて、同省は「処分歴を隠して、他の地域の教育委員会に採用されることを防ぐための措置だ」と説明する。だが、一部の教育委員会からは「照会手段だけを提供されても、現行の教職員免許法や学校教育法を改正しない限り、再採用を完全に防ぐのは不可能だ」との疑問の声も上がっている。

 刑法、道路交通法などに違反して懲戒免職処分などを受けた教員は、官報に掲載される。文科省は2018年から、こうした処分歴を検索できる独自ツールを教委に提供している。

 一般的に、児童に対しわいせつ行為などを犯した場合、原則として懲戒免職となり、3年間は教員免許が自動的に失効する。その処分歴の情報を文科省は各自治体と共有しているのだが、これまでは3年を超えると処分歴が開示されなくなっていた。今回の措置で照会できる経歴は広がり、懲戒免職処分の有無に関して調べることは容易になった。一方で、官報に載らない停職以下の処分については「自己申告頼み」であることに変わりはない。

 例えば、愛知の小学校に勤務していた臨時講師が2017年、児童へのわいせつ行為で懲戒免職になった事件だ。同教員は13年、当時勤務していた埼玉の小学校でも児童ポルノ禁止法違反の容疑で逮捕され、停職処分になっていたが、処分歴を隠し、下の名前の漢字を変えて15年に採用されていた。

前科、前歴は教員採用で欠格事項にならない

 教育職員免許法では、懲戒免職処分や分限免職処分、禁錮以上の刑を受けた教員の免許は失効すると規定されている。だが裏を返せば、免許が失効しても3年間大人しくしていれば、再び教員免許を取得することもできるし、各教員採用試験を受験できるということだ。

 厳密にいえば、教育委員会側もそうした前科、前歴を理由として採用を拒否することができない。これは教員にとどまらず公務員全般に言えることだが、採用を拒否するためにはなんらかの「欠格事項」に該当する必要がある。仮にわいせつ事件などの前科、前歴がある人であっても、「刑期を終えた者」「執行猶予期間が過ぎた者」はそれに該当しない。いずれも憲法第22条が保証する“職業選択の自由”に抵触するためだ。

 東京都教育庁人事部選考課の担当者は次のように語る。

「未来についてはわかりませんが、現状での教員採用ではそうした前科、前歴は採用時の欠格事項にはあたりません。我々は法律に則って採用活動を行うのみです」

実質的な採用判断は教育委員会に丸投げか

 関西地方の自治体の教育委員会関係者も次のように語る。

「処分歴の照会の検索が可能になっても、児童生徒に対する不適切な行為なのか、窃盗などの犯罪なのか、詳細に関しては直接、各都道府県教委に聞かなければわかりません。しかも処分歴がわかったとして、筆記試験や面接試験で高得点を獲得していた場合、処分歴を理由に採用を拒否することができるのかという疑問があります。

 受験者が公務員試験で『試験結果開示請求』を行った場合、原則として合格、不合格の理由を開示しなければなりません。これは教員採用試験でも例外ではありません。仮に過去の処分歴を理由に、不合格とした場合、受験者に訴えられる不安がつきまといます。間違いなく判例集に掲載される裁判になるので、担当弁護士は最高裁まで争うでしょう。

 子どもたちと直接向き合うことになる現場としてはどんな手を使っても、できる限り良い教員を採用したいと思っています。今回の措置はその参考の一つになるのは確かです。

 一方で、本来国が責任をもって線引きするべき事柄が、各教委に丸投げされているように感じます。つまり『処分歴は見られるようにしたから、後は自分たちの責任で採用の可否を判断してね』ということです。抜本的な解決を目指すのであれば、教員採用に関する各種法律を改正するしかないと思うのですが」

 安倍晋三政権は、実質的な政策の内容より“やった感を醸し出すことがうまい”と評されることが多かった。今回の教員の処分歴の検索期間延長も早くも“やった感”が漂い始めている。16日には菅義偉政権が発足し、萩生田光一文科相も再任する見通しだが、これで一連の対策が終わりにならないといいのだが。

(文=編集部)

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