「黒田砲発動!」日銀の“異次元緩和”で市場が祭り 日経平均200円安から一夜で272円高に急反転
日本銀行が4日、金融政策決定会合を行い“異次元”の金融緩和策を発表。黒田東彦総裁が「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策をすべて講じた」(5日付の日本経済新聞)と強調した緩和策の内容は、日銀が市場に供給する金の量を「今後2年で倍増させる」という大胆なもの。国債に加え、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)などのリスク資産も買い増すことも発表され、期待を上回る内容に、市場はお祭り騒ぎになった。
4日のロイターは、黒田日銀の緩和策を「バズーカ砲」と表現。発表後、ドル/円が2円以上円安に振れ、約200円安だった日経平均は272円高まで急反転するなど、通常では考えられない動きを見せた。
「政策目標を金利からマネタリーベースの量に変更したことは、ボルカー元FRB(米連邦準備理事会)議長がとったインフレ退治政策以来の衝撃との声もある」(ロイター)。
5日付の日経新聞記事は、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時0.425%まで低下(価格は上昇)し、2003年6月の過去最低金利(0.43%)を更新したと伝えている。また株式市場では、金融緩和で恩恵を受けるとの見方から、不動産や金融株の値上がりが顕著で、「住友不動産が10%高と急伸、三菱UFJフィナンシャル・グループも5%上昇した」ことを取り上げた。4日の産経ニュースによれば、「売買代金首位はケネディクスで1000億円超。3メガバンクのほか、アイフル、ソフトバンク、トヨタ自動車、ソニー、キヤノンと9銘柄が600億円を超える大商いとなった」。
有識者からもこれを評価する声が上がっており、5日付読売新聞に寄稿したマネックス証券の村上尚己チーフ・エコノミストは、「ほぼ100点満点。(中略)マネタリーベース(資金供給量)の拡大規模を来年末まで示し、長期にわたるコミットメント(約束)をしたことは、海外投資家の期待にも応えるものだ。当面、円安・株高・債券高の流れが続くだろう」と話し、同じく第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストも「今回の決定は、日本銀行のレジーム・チェンジ(体制転換)を印象づけ、市場の期待をつなぎとめることになるはずだ」と好感している。
ツイッター上でも、「国外で黒田総裁の信任はバーナンキ氏やドラギ氏と同レベルまで高まるだろう」「相場まじ鼻血出そうだわ:(;゛゜’ω゜’):」(原文ママ)など、投資家を中心に絶賛のツイートが相次いでいるが、大胆な金融緩和にはリスクも伴う。
「資産バブル危険も」の見出しで警鐘を鳴らしているのは、5日付の毎日新聞。安倍晋三首相が「大胆な金融緩和」を訴え、事実上の選挙戦に突入した12年11月中旬以降、日経平均株価は45%もの上昇を見せている。このことに「企業の経営実態とはかけ離れた値上がりで、バブルの兆候」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との見方も出始めているという。
同紙は、資産バブルは株や土地などの資産を持たない人への恩恵は少なく、その一方で、バブルが崩壊すれば一気に景気が冷え込み、悪影響は資産を持たない人にも広がることを懸念。緩和を終了する「出口戦略」の難しさにも言及している。
また日経新聞も、「政府の財政規律が緩めば、市場からの信用に傷がつき、長期金利が急騰する懸念も残る」「緩和効果をうまく引き出し、デフレ脱却の好機をとらえるためには、政府の側でも、効果的な成長戦略の実現を急ぐ必要がありそうだ」と慎重な姿勢を見せている。
株高・円安の急進で市場は沸き立っているが、問題は5日付の朝日新聞が指摘しているように、「緩和効果を実体経済に波及させられるか」ということ。日本経済は失われた20年を取り戻し、かつての強さを取り戻すことができるのか。その扉はまだ開かれたばかりだ。
(文=blueprint)