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六代目山口組系組員の犯行! 尼崎銃撃事件の犯人逮捕「予定された自首」「古川組組長が狙われた理由」

文=山口組問題特別取材班
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六代目山口組系組員の犯行! 尼崎銃撃事件の犯人逮捕「予定された自首」「古川組組長が狙われた理由」の画像1
捜査車両が多数集まった、発砲事件後の現場

 11月5日、兵庫県尼崎市内の警察署に1人の男が出頭してきた。男は、六代目山口組の二次団体・三代目司興業の幹部、藤村卓也容疑者。11月3日に同市内で起きた、神戸山口組若頭補佐でもある三代目古川組の仲村石松組長と同組舎弟頭を銃撃し、負傷させた事件にかかわったとして出頭し、その後、逮捕されたのだ。

 事件から2日という短期間での自首となったわけだが、業界内では、犯人は早々に名乗り出るだろうという見方があった。

「もし、犯行が六代目山口組サイドのものであれば、これまでも発砲事件などのヒットマン(実行犯)は早期に自首しています。それが殺人や殺人未遂のような長期刑にあたる罪とわかっていたとしても、です。犯人はそれだけの覚悟の上で犯行に及んでいるということ。昔から、事件後にヒットマンが自首することには、2つの意味があるとされていました。ひとつは『攻撃をしたのは我々だ』と内外に知らしめるための犯行声明的な意味。そしてもうひとつは、犯人が自首することで、捜査に蓋をさせるためです。犯人が逃げれば逃げるだけ、当局の捜査は広範囲に及び、組織的であったかのように解釈され、組織幹部にまで当局の手が伸びる可能性が出てきます。捜査を早めに終わらせ、逮捕者を必要最小限にとどめるためにも、早めの犯人の自首が必要なのです。それによって、事件を早期解決したい当局の面子も保たれます」(犯罪事情に詳しい専門家)

 犯人が長期刑を覚悟してまで自首することは、そもそもはヤクザ社会全体においても“誉れ”とされていたのだが、時代が変わり、逮捕された際の刑期が長期化したため、そうした風潮が変わりつつあった。事実、2017年に起きた絆會の織田絆誠会長(当時は任侠山口組代表)襲撃事件では、同組組員が犠牲になっているが、犯人として指名手配された神戸山口組系組員はいまだに逃走を続けている。

 一方、六代目山口組サイドは、今日でもヒットマン自らが自首するというスタンスを取り続けているというのだ。

「それは組織的な戦略というより、六代目山口組の組員一人ひとりが、この山口組分裂問題を終わらせるという強い気持ちが作用しているから、できることなのかもしれません」(前出の専門家)

威嚇目的ではない「覚悟を決めた」の発砲だった!?

 そして、大方の予想通り、今回も神戸山口組幹部を狙った発砲事件の犯人として、六代目山口組系組員が名乗り出てきたのだ。だが、出頭してきた藤村容疑者の逮捕状が執行されるまでには、半日近い時間を要することになったようだ。

 「まず、藤村容疑者が犯行に使用された拳銃を所持していなかったこと。また、現場から逃走する犯人の姿をドライブレコーダーが撮影していたのだが、その人物と同一であると断定しにくかったことなどから、身代わり出頭の可能性も否定できなかったのでしょう。そのため、藤村容疑者が自首した警察署には多くの報道関係者が詰めかけていたのですが、そんな中、1人の男性が署内へと入って行きました。それが今回銃撃された仲村組長だったようで、犯人に対する面割(事件当事者に容疑者を見せて、犯人かどうかを確かめる行為)が行われたのではないかと思われます。この面割が、容疑者逮捕の大きな材料になったのでしょう」(実話誌記者)

 また、藤村容疑者が出頭した後、同じ事件にかかわったとして、別の人物も出頭してきたのではないかという情報も流れたが、事実関係は定かになっていない。

 藤村容疑者の容疑は、仲村組長と同組舎弟頭に対する殺人未遂。犯人が放った銃弾は、仲村組長の両太腿へと命中し、右太腿に不全骨折という重傷を負わせた。舎弟頭は、犯人を追いかけようとした際に撃たれ、左手の手首付近を銃弾が貫通している。2人とも命に別状はなかったが、身体に銃弾を浴びているのだ。威嚇目的での発砲ではなく、危害を加えることが目的だった可能性が高く、前述の通り、長期刑は避けられない罪に問われるわけだが、犯人は、それを理解した上で出頭してきているのだ。これこそ、六代目山口組のスタンスの現れといえるだろう。

狙われた仲村組長の出身母体は六代目山口組へ

 ただしかし、なぜ六代目山口組の中でも、司忍組長を創設者に持つ、三代目司興業の幹部が犯行に関わったのか。ある組関係者はこのような背景があったと話している。

「今回の犯行現場であり、三代目古川組の拠点である尼崎市内には、司興業に加入した琉真会という組織が存在している。そもそも琉真会は、Vシネマにもなった第4次沖縄抗争(1973〜81年)という激しい闘いを経験した組織で、その抗争中に、当時、三代目山口組の直系組織である大平組で舎弟頭を務めていた初代古川組へと加入。同組で若頭を務め、のちに二代目大平組を率いる中村天地朗組長(引退)が、組織名を考えたといわれている組織だ。武闘派として数々の武勇伝を残しており、創設された当初から同組の幹部だったのが、今回発砲された仲村組長ということになる」

 仲村組長は、琉真会の最高幹部から古川組直参へと昇格し、同組最高幹部を歴任した後に、2017年に三代目古川組の当代となっている。一方で、仲村組長が抜けた琉真会は、一昨年に三代目司興業に加入。そのため、仲村組長は出身母体と袂を分けた形となっていたというのだ。そうしたいびつな関係になんらかの終止符を打つために、三代目司興業の藤村容疑者らが犯行に及んだのではないかと、この組関係者は話している。

 「これも山口組分裂という空前絶後の事態が招いたことといえるでしょう。いずれにせよ、六代目山口組サイドは、神戸山口組に向けて、好戦的な態度を見せ続けていますし、それは神戸山口組が解散するまで続くのではないかと考えられます。そうなると当局による締め付けがますます強化されるわけで、どちらの組員にとっても望ましいことではありません。ただ逆にいえば、神戸山口組を解散に追い込めば、その状況は解消されるともいえるわけで、今回の事件にも見られる、六代目サイドの徹底した姿勢は早期決着を狙ったものとも考えられます」(ヤクザ事情に精通するジャーナリスト)

 またしても幹部が狙われた神戸山口組は、こうした六代目山口組による攻撃の連続により、確実に組織が弱体化している。山口組分裂問題の決着は近いのか。神戸山口組が、組織の存続を賭けた戦いを見せるのか。その動向に注目が集まる。
(文=山口組問題特別取材班)

山口組問題特別取材班

山口組問題特別取材班

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年の山口組分裂騒動以降、同問題の長期的に取材してきた。共著に『相剋 山口組分裂・激動の365日』(サイゾー)がある。

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