日付が11月18日に変わったばかりの0時15分。先日、六代目山口組系組員が、神戸山口組幹部らに対しての発砲事件を起こした兵庫県尼崎市内で110番通報が入った。今度は、六代目山口組の二次団体である三代目司興業傘下の琉真会会長宅に銃弾が撃ち込まれたのだ。放たれた銃弾は3発。果たしてこれは、先日、同市内で起きた発砲事件に対する報復なのだろうか【参考記事「 尼崎銃撃事件の犯人「予定された自首」」】。
実話誌記者はこう話す。
「尼崎市内は、特定抗争指定による警戒区域と定められているため、同地域では組員への組事務所への出入りは禁じられています。発砲があった施設も実質は琉真会事務所と見られていますが、厳密には会長が居住する自宅という扱いだったため、制限を受けていませんでした」
さらに、先の発砲事件との関連性について、こう指摘する。
「先日銃撃された神戸山口組幹部である三代目古川組組長は、琉真会の出身なんです。それが今や敵味方の関係になっていた。そんな背景がある中で、琉真会の上部団体となる司興業系幹部らが、三代目古川組組長らを狙った。そこから日を空けずに、今度は琉真会の本部ともいわれている会長宅が狙われた。犯人は定かではありませんが、普通に考えれば、先の発砲事件への“返し”、つまり神戸山口組サイドの報復と考えるのが妥当。すなわち、神戸山口組は、まだ諦めたわけではないことを意味するのではないでしょうか」
ここまで神戸山口組は、劣勢に立たされ続けていたといえる。真相は定かではないが、業界内では「六代目山口組サイドは、年内で分裂問題に決着をつけるべく、神戸山口組サイドへ武力行使を続ける一方、水面下では組織中枢の切り崩し工作を進めているようだ」(業界関係者)と囁かれていたのだ。
この1年、そうした六代目山口組の攻勢に対して、ほぼ沈黙を守り続けていたといえる神戸山口組が、さまざまな背景がある中で、今回は報復とおぼしき動きを起こしたのではないかと見られている。これは前出の記者の見解にもあるように、神戸山口組はまだ諦めていないことの意思表示なのだろうか
一方、ある業界関係者は、尼崎市内に起きた一連の発砲事件について、このように話している。
「形としては、三代目古川組の組長と舎弟頭が発砲されたことに対する返し。つまりは、神戸山口組側による犯行との見方が強いだろう。ただ、もっと根深いものがあるのではないか。三代目古川組組長は、まだ二代目古川組体制の頃に、三代目琉真会の会長として組名乗りをしていた時期がある。だが、その先々代にあたる初代琉真会会長は、2018年に、“実際には代を譲ってはいない”と主張しだし、初代琉真会として司興業に加入、六代目山口組陣営に入ったのだ。今回狙われたのは、この初代琉真会会長の自宅。つまり、三代目古川組組長と初代琉真会会長はただならぬ因縁があったということ。今回の事件は、神戸山口組による組織的な報復というより、元身内同士の骨肉の争いともいえる側面もあったのではないか」
一方で、同じく11月18日、尼崎市内の発砲事件から約2時間後の午前3時ごろ、千葉県松戸市でも組事務所が発砲される事件が起きている。発砲された組事務所を率いる一家の総長は、稲川会から処分されたのち、一本どっことして独立した組織を運営しており、同組織に対しては、これまでも稲川会系による発砲事件が起きていた。いまのところ、尼崎市内の発砲事件との関係性は明らかにはなっていないが、この組織は神戸山口組に近い存在だと業界内では見られている。
今回の尼崎市内で起きた一連の発砲事件が、分裂問題終結に向かっていたとされる流れを止めることになるのか。業界内がまた少し騒然とし始めている。
(文=山口組問題特別取材班)