――具体的には、どのような動きが始まるのでしょうか。
渡邉 日本に限らず、テロ勢力に関連する国家、組織、個人に対して経済的な制裁を科すことで弱体化させるという動きが強まることは確実です。たとえば、理由は明らかにされず、すぐに解除されましたが、沖縄県の米軍基地に反対する活動家の銀行口座が凍結されたことが明らかとなりました。これも、金融規制強化の流れの一環といえます。
現在、日本で国際テロ組織に指定されているのは日本赤軍とオウム真理教ですが、今後は中核派や革マル派などにも対象が広がっていくものと思われます。また、国連の薬物・犯罪事務所などが定める条件に従って、日本のテロ関連組織をあらためて精査する動きが始まり、必要に応じて国家公安委員会委員長が指定します。そこで指定された団体などに資金提供などを行えば、処罰の対象となります。
今回の「テロ等準備罪」と14年に成立した「テロ関連3法」、さらに今後、金融機関の口座や年金などの情報との紐付けも始まる「マイナンバー」の本格運用によって、カネの流れの明確化とヒトの特定が進むことになります。
米国、北朝鮮への制裁強化で中国経済が崩壊か
――あらためて、「金融制裁戦争」によって世界はどう動くのでしょうか。
渡邉 アメリカの北朝鮮制裁強化で中国が崩壊する可能性が高いです。たとえば、先に述べた対北制裁強化の法案に一番反対しているのが中国であり、何度もアメリカに抗議しています。
なぜかといえば、それによって実際に苦しくなるのは中国だからです。現在、北朝鮮の取引先の約90%は中国企業であるといわれており、資金をやり取りしているのも中国の銀行です。それらの企業や金融機関がすべて制裁の対象となる可能性があるわけで、両者とも貿易決済が一切できなくなり、銀行口座は凍結しなくてはいけなくなるなど、そのダメージは計り知れません。
仮に中国政府が反発すれば、銀行口座の住所にあたる「SWIFTコード」が削除されることになります。そうなると、強制的にカネのやり取りが停止されることになるわけですが、すでに北朝鮮では3月に3行の「SWIFTコード」が消されており、国際的な金融ネットワークから外されています。
また、中国では、かねてより問題視されているゾンビ企業が鉄鋼や船舶などの過剰生産の温床ともなっています。国内で余ったモノがダンピングされるかたちで先進国の市場に流入し、マーケットの値崩れを引き起こしているわけです。しかし、前述したように、アメリカは制裁を科すことを決定しており、同様にEU(ヨーロッパ連合)も反ダンピング関税の適用を確定させています。今後は、世界的な中国製品の排除が進められるでしょう。
(構成=編集部)
『決裂する世界で始まる金融制裁戦争:米中朝の衝突で急変するアジア 共謀罪・マイナンバーで叩き潰される者たち』 北朝鮮問題に何ら対処せず、ICBMの開発を許した中国に対して、米国はついに金融制裁を発動! 朝鮮・アジア情勢は今後、新局面へと突入する。 一方、日本はテロ等準備罪が成立し、パレルモ条約締結にようやくこぎつけた。これでマイナンバー、テロ3法と合わせて、中国・北朝鮮とつながる反日過激派テロリストが炙り出されることになる。 激変する世界のなかで進む「金融制裁戦争」の行方とは!?