東北新社に勤務する菅義偉首相の長男、正剛氏から総務省総務審議官時代に接待を受けていたことが明るみになり、注目を集めている山田真貴子内閣広報官。そんな山田氏が、一般社団法人「超教育協会」のオンラインコラムに出演した際、「飲み会を絶対に断らない女としてやってきた」と発言していたことがインターネット上で物議を醸している。
JIJI.COM(時事通信社)は24日、記事『「飲み会絶対断らない女」 山田真貴子氏、昨年の動画で公言』を公開。「飲み会を絶対に断らない女としてやってきた」という山田氏の発言をピックアップした上で、「山田氏の国会招致を求める野党側からは『国会に呼ばれても断らない女だと思う。機会を早急につくりたい』(安住淳立憲民主党国対委員長)との声が上がった」などと報じた。
山田氏「断る人は二度と誘われません」
ちなみに総務省が発表した資料によると、山田氏が正剛氏らから接待を受けたのは2019年11月だ。各社報道によると今回、問題とされている動画は2020年の6~7月ごろ、若者に向けて公開されたものという。インターネット上で出回っている動画で山田氏は以下のように語っている。全文ママで書き起こし、引用する。
「3つ目に幸運を引寄せる力についてです。実績をあげられるプロジェクトにめぐりあったり、自分にチャンスをくれる人に出会ったり、そういう幸運を皆さん願うと思います。しかし、プロジェクトや人にめぐりあう確率というのは人によってそう違うはずはありません。
違いはどれだけ多くの人に出会い、多くのチャンレジをしているか。イベントやプロジェクトに誘われたら、絶対に断らない。まぁ飲み会も断らない。
断る人は二度と誘われません。幸運に巡り合うそういう機会も減っていきます。私自身、仕事ももちろんなんですけど、飲み会を絶対に断らない女としてやってきました。勉強、プロジェクト、人、多くのものに出会うチャンスを愚直に広げていってほしいと思います」
社会人として、誘われた飲み会を断るか、断らないかは各個人の考え方だ。飲み会に頼らなくても、趣味や知人の紹介などを介して人脈を広げる機会や商機をつかむチャンスはいくらでもあるだろう。また「特定の飲み会に参加しないことで、なんらかのペナルティや不利益が課せられる」ことを肯定する言動は、厚生労働省が企業・団体に対して防止を呼び掛けているアルコールハラスメント5項目の「飲めない人への配慮を欠くこと」に該当する可能性がある。今回の発言に関し、山田氏と同年代のある元総務省職員は次のように語る。
「今回の正剛氏と接待の件はどう考えてもアウトでしょう。一方で、動画の発言だけを切り取って、正剛氏の件と直結させるのは少し乱暴な気もします。当人の資質と饗応を受けたことが、まったく関係がないとは言いませんが……。山田さんは確かに、発言のような人だったと聞いています。総務省の古い世代は『飲みにケーション』を自身のプロジェクト進行のための最良のツールだと考えている人間が多かったと思います。
総務省内の旧自治省、郵政省ラインの人間は、地方自治体の総務部長や副知事、地方のハブ郵便局の幹部などへの出向を経て本庁に戻ります。そのためか『飲み会』に関し、地方在任時に培ったおおらかな考えを持っている幹部も多いのです。ただ記者や他省庁職員、自治体幹部と割り勘で飲みに行くのとは違い、利害関係のある企業関係者と飲みに行くのはご法度であることに違いはありません。
山田さんは郵政省出身で、最終的に情報通信国際戦略局長まで上り詰めた。山田さんが入省した1984年は、まだまだ女性職員に対する偏見も強かった時代です。バブル全盛期ということもあり、『飲み会に来ない奴には仕事は任せられない』という雰囲気だったと思います。動画で山田氏が語っている『断る人は二度と誘われません』という言葉に、当時の霞ヶ関の雰囲気が彷彿とされます。そうした環境下で勝ち上がっていくために、今の『飲み会』に対する考え方を持つに至ったのではないでしょうか。だからといって、接待を受けまくっても良いとはなりませんが……」
なぜ動画は消えたのか
そもそも、この動画はどのような趣旨で公開されていたのだろう。超教育協会のサイト上に掲載されていた山田氏の当該動画は24日午後1時の段階で削除もしくは未公開の設定になっていた。
超教育協会にはNTT、KDDI、ソフトバンク、グーグル合同会社といった大手情報通信企業の幹部が理事として参加。「教育・人材育成に関する社会提案、政策提言等を集約した提言する」ことなどを目的に、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、オンラインでのシンポジウムなどを開催し、政財官の有識者や教育者が様々な提言活動を行っている。今回の動画も若者の将来設計に関する提言だったようだ。
タイミング的に物議を醸したとはいえ、山田氏が接待問題に対し直接言及したものではないのなら、このタイミングで削除をした理由はなにか。山田氏から削除依頼があったのだろうか。それとも同協会が独自に不適当と判断したのか。
以上の点に関してBusiness Journal編集部は同協会に問い合わせているが、24日午後5時現在、回答はない。回答があり次第追記する。
(文=編集部)