「確かに、年に2度ある“月間”は、ヤクザなら誰しも嫌なもんだったが、こんなに多くの逮捕者を出した月間は過去にないのではないか」
六代目、神戸、任侠……どの山口組組員に限らず、今回の暴力団取り締まり強化月間、通称「月間」に対して、このような言葉を口にしている者は少なくない。筆者の現役時代を振り返っても、ここまで次々と逮捕者を出した「月間」は過去に記憶がない。しかも大物クラスが一斉に摘発されているのだ。
裏返せば、警察当局が、今回の「月間」に照準を合わせ、これを機に分裂騒動に揺れる山口組全体の弱体化に本腰を入れている気がしてならない。
前回の記事【参考記事『任侠山口組から「織田代表の誕生日」に関する異例の通達が…九州では発砲事件、警察による大量検挙も継続中』】でも触れたように、六代目山口組若頭補佐である三代目弘道会・竹内照明会長は、勾留期限いっぱいとなる10月22日、これまでと同じく暴力団排除条例違反容疑(みかじめ料徴収)で再々逮捕された。今回は、ほかにも三代目弘道会・中野寿城若頭、同・間宮誠治本部長ら最高幹部が合わせて同容疑で逮捕されている。
「竹内会長がみかじめ料徴収で逮捕された当初から『3回は再逮捕される』と噂になっており、同時に弘道会の最高幹部らも一気に同容疑で逮捕するのではないかといわれていた。それが現実になってしまった」
大阪での摘発が進まない理由
現在、当局では、ヤクザの資金源のひとつといわれるみかじめ料を根元から断つための動きを見せている。特に弘道会の本拠地がある名古屋、そして東京の繁華街の各店舗に対して、過去数年まで遡って、ヤクザにみかじめ料を支払っていなかったかどうか、洗い直しが行われているといわれているのだ。
そうした成果がここに来て上がっているために、今回の逮捕劇に至ったともいえるのだが、ただ大阪一の繁華街であるミナミだけは例外だと捜査関係者は話している。
「愛知や東京でも実践されたように、当局は経営者らにローラー作戦をかけて、みかじめ料に関するアンケートを取っているのだが、それに対してミナミの人間は非協力的というか、なかなかまともな回答をしてこない。その理由のひとつに、暴力団が自ら抱えている、実態のない半グレグループを回収係に使っているからではないかと見ている。半グレを使うことによって、組の代紋を使用することなく、それによって暴力団の直接的関与をはぐらかすことができているのではないか。これだと店側も、組の関与を裏付けるような回答ができないはずだ」
確かにそういう一面はあるだろうが、筆者は必ずしもそうは思わない。また、大阪という土地柄、警察を嫌うという風習が特にあるわけでもないとも思う。では、どうしてなのか。
それは、単に面倒くさがっているのではないだろうか。回答を作成することも面倒だし、その結果、ヤクザと面倒が起きたら、それこそ面倒だという気持ちがあるのではないか。関西人は、他地域の人に比べて、そういった体質があると思う。成果が上がらないのは、そうした面が影響しているのではないかと筆者は推測している。