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質劣化する弁護士たち…勝手に和解成立、裁判を放置、預け金を着服、守秘義務破り

文=深笛義也/ライター
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 橋下氏の発言を問題として、光市母子殺害事件の弁護団のうち19人が橋下氏と読売テレビを相手取って、損害賠償と謝罪広告を求める訴えを起こしたが、広島地裁は「放送の発言の中に、人身攻撃に及ぶような表現は認められない」として請求を棄却。2015年、最高裁での上告棄却でこれが確定したが、大阪弁護士会からの業務停止2カ月の懲戒処分はそのままだった。

 誰でもできる懲戒請求だが、内容的にはどのようなものがあるのだろうか。

「本来の懲戒制度っていうのは、弁護士と依頼者との間のトラブルに基づいて起きる話で、伝統的にはお金の問題なんですよ。弁護士報酬の話をしっかりと説明しないで、後からふんだくられたと感じてしまったとか。預かり金を弁護士に預けといたら、勝手に使われちゃった、着服されたとかっていうのが、本来的な懲戒請求の対象になる案件なんです。あとは、判決が出てから14日以内に控訴しなくてはいけなくて、本人は控訴するつもりで弁護士にちゃんとお願いしていたのに、控訴期限を徒過してしまって、控訴できなかったとか。かつてはそういう、『弁護士としてこれはダメだね』というのしかなかったんです。

 今はさまざまものがあります。最近では、弁護士が自分のクライアントの女性と不倫関係に陥って別れた、というケースがありました。不倫関係に陥ったということだけでは、なかなか懲戒はできません。女性がどういう主張をしたかというと、『私に対して結婚の約束をした』『将来、弁護士が独立した時に、事務員として雇ってくれると約束した』と、その約束が守られなかったと言ったんです。これは実際に、戒告を食らっています。一番軽い懲戒処分ですけど、発表されてインターネットにも載りますから、かなり恥ずかしい。

 不倫でなくとも、男女関係になって別れたというケースもありました。これももちろん、それだけでは懲戒にはなりません。女性は『付き合っている間に、守秘義務のある文書を私に見せた』と主張したんです。守秘義務違反というのは、クライアントのお金を着服するのと同じくらい、重罪。言い訳できないんです。それで戒告食らっています。飲酒運転で交通事故を起こして懲戒された先生もいます。最近でも、ロリコンビデオを持ってて捕まったとか、幼女の写真盗撮をして捕まったとかで、懲戒された先生もいます。破廉恥罪で起訴されて罪になって、さらに懲戒もされるという二重苦を味わうわけです」

実際の懲戒例

 日弁連が毎月発行している機関雑誌「自由と正義」には、実際の懲戒例が載っている。その一部を紹介しよう。

 埼玉県川越市に事務所を置く弁護士は、クライアントと「十分協議することなく--合計1500万円を支払う旨の和解を成立させ」、その支払いをめぐる裁判の「口頭弁論期日に出席しなかった」うえに、その金額を支払わなかったことによる損害として528万円ほどを請求されると、クライアントの「承諾を得ることなく請求を許諾した」として、除名の処分を受けている。

 札幌市中央区に事務所を置く弁護士は、クライアントから2011年8月に「自己破産および免責申し立て手続きを受任した」が、2016年4月にクライアントから問い合わされるまで、「手続きの事務処理を放置」。5年以上もの放置で、戒告の処分を受けた。

 福岡県福岡市に事務所を置く弁護士は、「依頼者の預かり金388万5052円を自己の生活費や事務所経費などに目的外に使用した」として、業務停止1年6カ月の処分を受けている。 以上は、弁護士の職務に関してのことで、救いがたいと言えるが、それ以上に、1人の人間としてどうなのかという例も散見される。

 栃木県小山市に事務所を置く弁護士は、以下の三度にわたる盗撮で、業務停止6カ月の処分を受けている。

・スーパーマーケット駐車場において、女性Aに対し、その背後から、持っていた動画撮影機能付き小型カメラをAのスカートの下方に差し出してスカート内の大腿部などを動画撮影。

・バス停留所において、女性Bに対し、その背後から、持っていた動画撮影機能付き小型カメラをBのスカートの下方に差し出して下着などを動画撮影。

・駅の上りエスカレーターにおいて、女性Cに対し、その背後から、持っていた動画撮影機能付き小型カメラをCのスカートの下方に差し出して下着などを撮影。

 札幌市豊平区に事務所を置く弁護士は、「女子児童(当時14歳)をして、その性器などを露出した姿態を撮影した上、これを日本国内に設置されたサーバコンピュータに送信させて記録・保存させ、児童ポルノ製造行為を行ったほか、札幌市内のホテルの一室において、女子児童に対し、スマートフォン1台の対象を供与して性交などをし、児童買春を行った」として、業務停止6カ月の処分を受けている。

 クライアントと男女関係になったのが、名古屋市中区に事務所を置く弁護士である。「2011年春頃以降関係が悪化し始めていたところ、同年4月30日、標題部に『あなたから受け取った写真の一部』と記載し、メール本文と明確な関連性がないにもかかわらず、懲戒請求者の上胸部から顔までが未着衣で写っている写真を添付したメールを送信した」として、戒告の処分を受けている。

 これらとは、傾向の異なる懲戒もある。沖縄県那覇市に事務所を置く弁護士は、以下を理由に戒告の処分を受けている。

・事務職員の懲戒請求者Aおよび勤務弁護士のB弁護士については、相当長時間におよぶ残業が長期間にわたり継続していたことを把握し、または容易に把握することが可能であったにもかかわらず、これらの者の健康に配慮した措置を十分に講じなかった。

・雇用する事務職員のうち正職員の残業が長時間におよんだとしても残業手当は定額打ち切りとする違法な残業手当制度を設ける。

・会話言語としていわゆる関西弁を用いる懲戒請求者Cに対して、勤務時における関西弁の使用を禁止。

「弁護士業界は、古くからずっと伝統的に徒弟制度なんですね。ボス弁と呼ばれる代表弁護士がいて、雇われるイソ弁がいる。これは『居候弁護士』の略ですね。最近ではイソ弁とはいわずに、アソシエイトといいますが、師匠と弟子という関係は同じです。アソシエイトは夜遅くまで残って、ボスの仕事をさせられる。だけど、そこで勉強して独立して自分で稼ぐっていう繰り返しが伝統で、今も多くがそうなんですよ。那覇の例だと、アソシエイトをこき使ってた上に、事務員の残業代を払わなくて懲戒食らっているわけですけど、そういうのは今までなかったんですよ。

 なぜかといえば、綱紀委員会とか懲戒委員会の先生も似たようなことやってるわけですよ。『こうやって苦労して仕事のやり方を覚えて、仕事を取れるようになってきたんだよ』ということで、それが当たり前だったんです。そういうことで懲戒になるというのは、新しい事例ですね」

(文=深笛義也/ライター)

次回へ続く

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