荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

残業代なし長時間労働合法化の「高度プロフェッショナル制度」、全職種対象になる可能性も


労働者派遣法」は1985年に制定され、翌86年に施行された法律で、通常の会社員では持っていないような高度な技術を持った通訳やソフトウェア開発など専門的な13業種が対象でした。

 しかし、これが政令(国会を通さない内閣の指示)により機械設計など3業種を加えた16業種になり、96年には26業種に拡大され、99年には派遣業種が原則自由化されました。ただし、この時点では、病院・診療所での医療業務や建設業務、警備業務などいくつかの業務では派遣が禁止されていました。

 しかし、その後、こうした業種も解禁になり、2015年の派遣法の改正では、「すべての派遣が原則3年までOK」ということになりました。結果的に、法律の導入当初は収入が高い専門職だけが対象だったはずの派遣社員は、専門的な知識がなくてもなれる「誰でも派遣」になり、収入面や待遇面でも正社員の一段下に置かれるようになりました。

高度プロフェッショナル制度」も省令で職種を広げられるので、「労働者派遣法」と同じように、将来は誰もが対象になる可能性があります。ちなみに、「高度プロフェッショナル制度」について、日本経済団体連合会(経団連)などはかつて「年収400万円以上を対象にしろ」と言っており、こうした方向で年収のハードルも下げられていく可能性があります。

 もし「高度プロフェッショナル制度」が「労働者派遣法」のようになってしまったら、「給料が欲しかったら、朝から晩まで休まず働かなくてはならない」という“奴隷社会”がやってくるかもしれません。「あんな法律さえつくらなかったら、みんな幸せに働けたのに」と後悔しないためにも、ここは野党にがんばってもらうしかないでしょう。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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