これからの教育の潮流は管理型から探究型へ
2020年の教育改革について解説したように、既存の管理型の学校教育を見直そうという動きが高まるなか、それに先んじて探究型の学びを実践している学校が多いのも、オルタナティブスクールの特長です。
では、探究型の学びとは、いったいどのようなものなのでしょうか。そのアプローチは、“探究”というぐらいですからさまざまですが、一方的に先生が正解を教えるのではなく、生徒自身が考え課題を解決することを促す学習といったらわかりやすいでしょうか。プロジェクト学習ともいわれます。既存の学校のなかでも総合的な学習の時間がそれに近いのですが、一部ではなく、教育のベースをそこに置いている学校を探究型の学校とここでは呼びます。
神戸で20年以上の実績がある「ラーンネット・グローバルスクール」もそのひとつ。今回は、その学校で行われている教育をレポートしながら、探究型の学びの実践と効果を考えてみます。
設立したのは、神戸情報大学院大学学長を務める炭谷俊樹氏。世界的コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニー勤務時代、デンマークに在住していた時に長女が受けた、一人ひとりに光を当てて個性や自立心を伸ばす教育に感銘したことがきっかけとなり、帰国後、このスクールをつくりました。カリキュラムは次の4つ。
1 .基礎学力をしっかり身につけるベーシック学習
2 .子どもにとって興味深いテーマを科目横断型に学ぶテーマ学習
3 .自分が興味をもったことを自ら探究するプロジェクト学習
4 .子どもたちがすきなことにとことん取り組むとことんやろう!
ベーシック学習で育んだ基礎学力を基に、子どもがやりたいという気持ちを大切にして主体的に学ぶ力を育てています。子どもの学習を支援するのは豊富な社会経験を積んだ社会人。先生ではなく、ナビゲータと呼ばれる人たちです。そのスタンスは教えるのではなく、子どもを信頼し、対話によって子どもと共に学び成長します。
しかし、見学に行くと既存の学校のイメージとはだいぶ違っていて、子どもたちは一見遊んでいるように見えるので、いわゆる学力がつくのかと心配にもなります。そこでその成果を知るために、実際にラーンネットで学んだ人たちに話を聞きました。
取材時に中学1年生になったばかりのM君は、ラーンネットを振り返って「好きなことを見つける6年間だった」と言いました。彼は小学1年の時、アメの販売機をつくったのですが、最初は段ボールの中に人が入って人がアメを表出させるものでした。それを手動式の販売機にしたいと、失敗しながら何度もトライ。小学3年の時についにレバーを回して商品が出る仕組みを完成させました。今では電子部品の知識もついて、さまざまな作品を作れるようになったそうです。