その間、ナビゲータは限界をつくらず、どうしたらできるかを一緒に考え、失敗しながらトライすることをサポートしてくれたとか。中学受験を経て私立中学に進学した彼は、理系クラスで上位の成績をとっていました。
また、すでに大人になった卒業生にも話を聞きました。取材時に東京大学大学院から有名なIT企業に就職したばかりのS君。ラーンネットで6年間過ごした後、中学受験で私立中高一貫校に進学。高校2年終了時に飛び級で会津大学に入学し、競技プログラミング部部長として、世界レベルの大会に出場するなど、コンピュータプログラミングの分野で活躍し、東大大学院在学中にプログラミングの国際大会にも出場。将来は得意なアルゴリズムを活かして、技術者を指導する技術者になりたいと話してくれました。
2人に共通しているのは、自分の中から湧き出る好奇心が学びの原点だということ。また、それを認めて支援する大人の存在があったからこそ、とことんがんばり抜く力がついたのではと感じました。
探究型学習は、高度知識の取得にも有効
炭谷氏は、「探究型学習と高度な知識習得は実は連動する」と言います。探究型で学習を深められる子どもは、結果として偏差値が高い大学にも入れるくらいの学力を習得することが多い。突き詰める経験があるから、知識を吸収するのも得意で、ペーパーテストや受験にも対応ができてしまうのだとか。
すでに新しい時代が始まっています。先生や親の言うことに疑問を持たずに黙って従ういわゆる良い子、ひたすら受験勉強だけをしていろいろな遊びを経験してこなかった子、失敗から学ぶ経験をしてこなかった子は、変化に対応することができず、使えない人というレッテルを貼られてしまうかもしれません。
今求められるのは、主体性と変化に対応する力を持っている人。人とは違う発想や個性をもっている人。つまり出る杭です。その上で、互いに違いを認め合いながら、協働して新たな世界をつくっていくことが必要なのです。
出る杭を伸ばすとは、子どもの中にある“自分で伸びようとする芽”を潰さずに大切に育てること。その手法のひとつが、探究型の学びなのでしょう。
これまで、市民権を得て来なかった面があった探究型の学校ですが、ここにきて注目されるようになり、ラーンネット・グローバルスクールにも問い合わせが殺到しているとか。時代の変化を読み取り、子どもの持っている力を引き伸ばすことに真剣に向き合っている学校は、これから伸びていくことでしょう。
教育現場も変化を求められているのです。
(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト)