使用禁止措置が続ている山口組総本部
今年3月に群馬県内で起こった衝突をきっかけに緊迫状態が続き、すわ全面抗争に突入か!? と思われた関東の巨大組織、住吉会と稲川会が和睦したのは記憶に新しい。その後、小川修司・共和一家七代目総長を会長とした新体制を発足させた住吉会であったが【参考記事「住吉会が新体制を発足」】、新人事をすべて発表することは見合わせる事態となっていた。その理由とは、住吉会十三代目幸平一家の加藤連合会・小坂聡会長が、稲川会系組織との衝突の責を負う形で謹慎となっていたからだった。
「加藤連合会といえば、住吉会でも別格といわれる加藤英幸総長(住吉会代表代理で、十三代目幸平一家総長)が興した組織で、住吉会きっての武闘派として知られる組織です。加藤総長の跡目を継承したのが小坂会長で、新体制では会長代行の重責に就任しています。しかし稲川会との抗争で謹慎に入っていたことから、その発表を見合わせていたようです」
その謹慎処分も解除され、6月28日から始まった住吉会の業界関係組織への書状披露の全国行脚では、小坂会長も姿を見せている。そして住吉会の最高幹部らは稲川会を訪問し、晴れて良好な関係であることを業界内外に知らしめたのである。
「住吉会と稲川会の仲裁には、住吉会と親睦の深い親分が尽力をされた。あまり知られていない話だが、小坂会長の謹慎を解除するにあたっても、そうした第三者的な、ある大きな力も働いたともいわれている」
この訪問により、関東の巨大組織の全面抗争が回避され、再び和睦が深められたということのようだ。
一方で現在も続くのが、日本最大組織、山口組の分裂問題である。オリンピックが目前に迫り、かつコロナ禍の影響からなのか激しい動きは起きていない。一時は複数の独立組織の団体が分裂問題を解消させるため、何らかの動きを見せるのではないかと業界関係者の間で囁かれていたのだが、その後、大きな進展を迎えていない。
「分裂問題の解消とは、必然的に神戸山口組の解散ということに直結する。神戸山口組が存続する限り、六代目山口組サイドは、手を緩めることはないだろう。一時は10団体近くの独立組織が和解へと乗り出すのではないかとも見られていたが、その後、何らかの動きは起きていない。まだ時間が必要となるのではないか」(業界関係者)
六代目山口組と神戸山口組は、現在も特定抗争指定暴力団に指定されている。特定抗争指定暴力団とは、対立抗争状態にあり、市民の生命・身体に重大な危害を加えるおそれがある組織が指定されるものだ。これにより、公安委員会が定めた警戒区域内における事務所の使用禁止や組員の活動が制限されている状態が続いている。“山口組の聖地”ともいえる神戸市灘区にある山口組総本部も現在は使用することができない状態だ。
この使用禁止制限を解除させるには、当局の特定抗争指定暴力団の指定から外されなければならないのだが、では、解除される条件とは一体、どういったものなのか。
「それは目に見えた分裂問題の終結です。分裂問題の原因となった神戸山口組がなくならない限り、いくら六代目山口組が勢力で圧倒し、一時のような危険な抗争状態でなくなっていたとしても、当局が特定抗争指定暴力団から外すことはないでしょう。すなわち当局サイドとしても分裂問題の終着点は、神戸山口組の解散を意味することになります。現状、神戸山口組は劣勢といわれながら、山口組と対峙する形で存続しています。分裂問題もまる6年を迎えますが、分裂前の状態に戻るまでにはまだ時間がかかるのではないでしょうか」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
確かに事件はいつも突如として起きるものだ。逆説的にいえば、分裂状態が続いている以上、何が起きてもおかしくはない状態が続いているということでもある。特定抗争指定暴力団を解除しないという当局の姿勢からも、その可能性は否定できないのだ。