MARCHクラスや日東駒専クラス、それ以外の就職支援・キャリア教育に熱心な中堅私大は就職実績が至上命題です。維持ないし向上させるために、早めの就職支援を考えるでしょう。
共愛学園前橋国際大、宮崎国際大など学生に勉強をさせる中堅私大も、後ろ倒しになれば後ろ倒しになった分だけ、勉強していることを評価される、という点で損することはなさそうです。
ここで関関同立の一角、立命館大が出ましたが、それについては次の項目でご説明します。
(4)それなりに損する大学
早稲田大文系学部(国際教養学部以外)、上智大、関西大、同志社大、関西学院大、日東駒専・産近甲龍クラス~中堅以下の私大で就職支援行事を後ろ倒しにする大学、早慶大・MARCHクラス、東京理科大・芝浦工業大・大阪工業大などの理工系学部
<解説>
早稲田大、上智大、関西大、同志社大、関西学院大という意外な名前がここで登場。これらの大学、後ろ倒しでも得するか、少なくとも損しないとみている就活コンサルタントもいるでしょう。
これらの大学に共通しているのは、後ろ倒しをまともに受け止めそう、ということです。大学3年10→12月移行の時も、この難関4大学は後ろ倒しをまともに受け止めて就職行事を後ろ倒しにしていました。就職行事を後ろ倒しにすると、その分、学生はのんびりしてしまいます。
後ろ倒しによるデメリットは、就活時期が後ろ倒しになる分、学生は中小企業へ目を向ける時期が遅くなることです。現状(大学3年12月開始)でも遅い、と言われており、それがさらに遅くなります。遅くなって求人があればいいですが、大企業の採用が一巡するのが大学4年9月ごろ。そこから中小企業に目を向けても、卒業まで半年を切っています。卒論などを抱えながら、就活を続ける余力があるかどうか。そして企業側も、短い時間で採用しようと思うかどうか。このあたり、疑問に思うわけです。
こうした弊害を中堅の私立大、就職支援・キャリア教育に熱心な大学関係者はきちんと理解しています。だからこそ後ろ倒しになっても、就活支援行事のスケジュールは、そう大きくは変えないでしょう。大きく変えないというのは、大学3年生の秋ごろから学内で就職ガイダンスや企業を招いての学内説明会を開催するということです。
それから中堅ないし中堅以下の私大の場合、大企業ではなく、中小企業を中心に考える必要があります。中小企業は、大企業よりも早めに採用活動を始める企業が多数あります。それを見越して、現時点でも就職行事を早めに設定している大学があります。
一方、問題の早稲田大、上智大、関西学院大、同志社大、関西大の4大学は、結果的に大企業就職にこだわっている節があります。これは学生も同様。しかも、そこそこの数は大企業に就職できてしまいます。大企業への就職が厳しい中堅私大なら「どうせ中小企業しか就職できないのだから、早めの対策を」と開き直ることができますが、この5大学はプライドがあるのでそうもいきません。
さらに、中堅私大以上に注目が集まりやすいところもポイント。就職支援行事を現状維持にした場合「就活時期が後ろ倒しになったのに、就職支援行事が同じ。これは大学こそ就活の早期化に手を貸しているのでは」と非難されたらどうしよう、と考えてしまうわけです。そうした非難を恐れて就活支援行事を後ろ倒しにすると、学生は確実に悪影響を受けることでしょう。
では、なぜ同じ難関大の慶応義塾大、立命館大は「それなりに損」ではなく「大きく得」(慶応義塾大)、「中立」(立命館大)なのか。
慶応義塾大の場合は、そもそも就職支援行事をろくにやっていません。学生はそれを見越して勝手に動いています。この行動力、バイタリティは、早稲田大の学生よりもはるかに上です。勝手に動いてOB訪問などをして、企業もリクルーターなどを使って接触していれば、就活時期が変更されても、それほど影響は受けません。むしろ、行動力が評価されやすい環境になる、ともいえるのです。