就活後ろ倒し、外資やベンチャーは得で、中小企業は損?抜け道多く、有名無実化懸念も
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7月8日、日本経済団体連合会(経団連)は、企業の採用ルールを改定し、大学新卒の就職活動を後ろ倒しする方針を決めました。具体的には、会社説明会などの解禁時期を大学3年の3月(現行は同12月)、選考開始を大学4年の8月(現行は同4月)に見直し、2016年卒の就職活動から適用する。この後ろ倒しにより、得する企業/損する企業はどこか? というのが今回のテーマです(当コラムの予想は、就活支援・採用状況の現状などを取材したうえでの予測です。現状と異なる場合は現状を優先します)。
(1)大きく得をする企業
大手企業(経団連加盟)は抜け道を駆使する企業
<解説>
そもそも論でいえば、就活開始時期に関する取り決めは、過去60年間つくられては破られ、破られてはつくりの繰り返しでした。今回も同様の運命をたどることは確実です。
では、なぜ就活開始時期を設定しても破られるのでしょうか?
答えは簡単で、罰則がないからです。就活開始時期は日本経団連が就職倫理憲章というもので、「この時期から広報を始めて、この時期からは採用選考を始めて」と勝手に決めているだけです。経団連に加盟していない企業は守る必要はありません。それから加盟企業であっても抜け道は山ほどあるわけです。
代表的なところでいえば、リクルーター制度です。若手社員を出身大学のめぼしい学生にあたらせて、「これぞ」という学生がいれば選考に呼ぶのが一般的です。また、ビジネスコンテストも、審査の過程でめぼしい学生を探して、同じく選考に呼ぶことができますので抜け道といえます。企業説明会も、業界説明会とかキャリアアップ支援フォーラムとか名前を変えればいくらでも開催できます。
そもそも、企業が無理に主催する必要はありません。大学のゼミ、学生団体など主催者が企業でなければ問題なし。「うちは企業説明会を早期に開いて就活早期化を助長しているわけではない。主催はうちではないし、広い意味でのキャリア支援につながると考えて協力した」とでも言えば、それ以上、どこからも文句は出ません。
こういう抜け道を駆使する大手企業は、就活後ろ倒しなど建前にすぎません。結果的には大学3年生秋ごろから動き始め、大学3年3月の広報開始時点では内々定者が決定。なんて事態は十分に考えられます。
このように書くと、「企業に抜け道を推奨しているのか?」と誤解される方がいるかもしれませんが、就職協定の歴史を調べていけば、結局のところ大手企業中心に抜け道を駆使しているのです。それが今回の後ろ倒しでも繰り返されると考えられます。
(2)そこそこ得をする企業
大手企業(経団連加盟)で抜け道を駆使しない企業、外資系・ベンチャー企業(経団連未加盟)
<解説>
経団連加盟の大手企業で抜け道を駆使しない、という企業があるかもしれません。しかし、過去の例からいえば、そんな企業が存在すること自体、信じがたいものがあります。大体、どこも表面上はきれいなことを言いながら裏ではさんざん抜け道を駆使しており、仮に存在したとしても大手企業、特に一般的な知名度の高い企業はそんなに損はしません。知名度が高く、それだけ学生の間でも人気があるでしょうから、後ろ倒しになっても志望者は一定数集まります。
一方、経団連未加盟の外資系・ベンチャー企業は、そもそも後ろ倒しがどうこうなど無関係。大学3年夏ごろから採用前提のインターンシップも開催していますし、同年秋ごろから学生に接触を始めます。多くの企業が後ろ倒しにシフトする中、早めに動ける企業はその分だけ得をします。
それから、インターンシップも方法の1つです。まだ後ろ倒しにはなっていない、現大学3年生(15年卒)のインターンシップが今年夏、昨年の3倍以上に増えています。これは後ろ倒しになっても、企業が夏のインターンシップである程度人材を見極めておこうというものですが、企業が広報目的でインターンシップを行うのは現在の就職憲章でもアウトのはずです。それを各社一斉にやるようになったわけで、これを抜け道と呼ばずしてなんと呼びましょうか。
(3)中立
中小企業(経団連未加盟)で抜け道を駆使する企業
<解説>
経団連未加盟の中小企業は後ろ倒しで広報期間が短くなる分、学生集めで苦戦することは総論編でご説明しました。大多数の中小企業は後ろ倒しで相当苦戦することが予想されます。では、少数ながら得をしないまでも損もしない中小企業は何が違うのでしょうか?
やはり、抜け道をいかに駆使するかです。ただし、大手企業と同じようなリクルーター制度などは有効ではありません。すでに実施されている方法では、いくつかの企業が連合を組んでの業界説明会を開催する、採用とは直結しない(と言い張る)セミナーを開催する、自己分析や面接対策などを含めた就職支援のセミナーを無料で複数回開催する、などが挙げられます。