もともと生活の便がよい中央線だったが、JR東日本が2010年頃より沿線開発に力を入れ始めたことで魅力は増している。沿線開発が活発化したのは、連続立体交差事業が遠因にある。これにより、JRの線路が高架化された。線路下の空間は商業施設や起業家向けのミニオフィス、公園に姿を変えた。
こうした都市開発事業を推進するために、JR東日本は都市開発を手掛ける子会社JR中央ラインモールを設立。武蔵小金井駅を軸に、高架下や線路沿いが大変貌を遂げている。
発展が著しい立川駅周辺
そして今、中央線の人気を牽引するのが、駅周辺の発展が著しい立川駅だ。立川駅の周辺は、戦後にアメリカ軍に接収された。米軍基地が返還された後、駅周辺は広大な国有地になった。そうした国有地の大半には、国の出先機関や公共機関が立地している。そのため、立川駅の周りには住宅が少ない。立川市の昼間人口は約20万で、都心から遠い西隣の日野市や八王子市よりも少ないのだ。
米軍基地として使用されていた国有地は、民間に払い下げられたものの、同エリアの大半は市街化調整区域だった。そうした法的な制限から、大規模な商業施設やタワーマンションなどを建てられなかった。
1998年に多摩モノレールが部分開業を果たすと、それを機に沿線が市街化区域に変更された。こうして、ほかの駅におくれを取りながらも、立川駅周辺の開発が急ピッチで進められる。立川市職員は、こう話す。
「統計があるわけではありませんが、週末の立川駅界隈は平日の約3倍の人出があると感じています。そうした来街者の多くは都内多摩地区の住民ですが、横浜・川崎などからも足を運ぶ人たちもいます。また、山梨県からの来街者もいます。来街者が多いことは市としても歓迎すべきことですが、やはり居住者を増やしたいというのが本音です」
現在、立川は駅を中心に開発が進められており、来街者が集中するのは駅前だ。また、国営昭和記念公園を訪れる家族連れやカップルも多いが、国営昭和記念公園も立川駅前の範囲内だ。市全域に、まんべんなく来街者が多いとはいえない。
立川市が今以上の人口増と発展を目指すなら、人の偏在を是正し、バランスの取れた開発に取り組む必要がある。
立川を代表する不動産開発事業者の立飛ホールディングスは、2015年に三井不動産とタッグを組んで立川駅から離れた場所に「ららぽーと立川立飛」をオープンさせた。さらに2017年には「アリーナ立川立飛」も竣工。同アリーナはプロバスケットボール「Bリーグ」の試合会場として使用されているほか、大相撲巡業も開催される。
武蔵小金井駅や立川駅の開発により、中央線沿線の人気は急上昇している。そこには、都心よりも不動産価格が低く、お手頃という要因もあるだろう。現在、これらの駅のほかにも中央線の沿線では開発が進められている。中央線の吉祥寺駅以西の駅・街の勢いは、衰える様子を見せない。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)