「また『パンツ』の話ですか。5年前のゴタゴタで、もう福井だけの話ではなくなってしまった。(障害者いじめを一部媒体インタビューで自慢していたことが掘り起こされ、東京オリンピック・パラリンピック開会式の楽曲担当を辞任した)小山田圭吾氏の件もありますし、こんな風にメディアが騒ぐと福井も一緒くたにして批判され続けるのではないかと気が気ではありません」
福井県のある自治体幹部はそう嘆息する。自民党の岸田文雄新総裁・首相は、国会対策委員長の要職に高木毅元復興相(衆院福井2区、清和政策研究会・細田派)を据えた。
一方、デイリー新潮(新潮社)は4日、「週刊新潮」(2015年10月22日号)の記事を加筆修正し『高木新国対委員長に「女性下着ドロボー」の過去 被害者の妹らが明かした「合鍵を作って侵入」「手には白い手袋をはめて」』として公開した。Twitter上では「女性下着ドロボー」「高木新国対委員長」がトレンド入りし、「凄まじい政権が誕生したな」「再チャレンジできる世の中はいいけど、性犯罪者が大臣ってのはアウト」などと物議を醸している。
事情聴取はされたが事件化はされなかった?
新潮は、下着泥棒に入られた被害者の妹に直撃取材を実施。そして、高木氏に疑いがかかる決め手になった「被疑者が使っていた車のナンバーを目撃し控えていた近所の女性」の談話も掲載している。同記事によると、高木氏は福井県警に事情聴取されたが、検挙に至らなかったのだという。
なお、高木氏は報道当時から「事実無根」として否定していたが、騒動は収まらず、地元紙の日刊県民福井が16年1月13日付朝刊の一面トップで『窃盗疑惑は事実 高木氏週刊誌報道 元捜査関係者が証言』と報道するに至る。同紙の取材に応じた元捜査関係者は「犯罪として立件された事実はないから否定したのだろう」と語っていた。
事件化されなかったのはなぜなのか。その理由を前述のデイリー新潮は次のように説明している。
「高木氏が下着泥棒を働くも事件化を免れたのは、敦賀市長で地元政界の“ドン”だった父・孝一氏が被害者家族に頭を下げて謝罪したからだ」
「(高木氏が立候補した)96年と2000年、いずれの選挙でも『下着泥棒』について触れた怪文書がばら撒かれたが、その裏で孝一氏は“火消し”のため、涙ぐましい努力をしていた」
そして「パンツ問題」は語り継がれる
同県内の自民党関係者は語る。
「新潮や日刊県民福井の報道が事実かどうかは知る由もありません。ただ市長(高木孝一氏)が96年、2000年の選挙時、この案件で地元紙やミニコミ誌、自民党福井県連、敦賀原発を運営する日本原子力発電の関係者らを頻繁に回っていたことは、政界関係者なら誰もが知っていますよ。とにかく”パンツ問題”は亡霊のように選挙があるたびに蒸し返されます。そして県連内の抗争の火種となって不要な争いを生み、党勢を削ってきた要因のひとつになっていると思います。
例えば、最初の新潮報道があった2年後の2017年のはじめ、自民党福井県連会長だった山本拓氏(衆院比例北信越ブロック、志帥会・二階派)が『県連が調査をした結果、(一連の報道を)事実と断定した』などと公表したのです。ところが、党本部は『県連として調査した事実はない』などと反論見解を出し、自民党内の抗争が激化しました。保守の拠点、福井はもうめちゃくちゃです」
福井県連の山本氏といえば、自民党総裁選に立候補し、党内をひっかきまわして物議を醸した高市早苗政調会長の元夫としても知られる。全国紙記者は話す。
「高木さんが復興相だったころから、表立っては誰も言いませんでしたが、野党はもちろん、報道陣や自民党、部下の官僚にすら陰で『パンツ大臣』と呼ばれていましたよ。実務能力に優れていて、そうした風聞をひっくり返せるほどの逸材というわけでもなく、東日本大震災の復興指揮も今一つ要領を得ないところがあり、噂が広がるのに拍車をかけたのかもしれませんね。
『昔のこと』『記録がない』などと否定するということは、冤罪だったとしても噂は残り続けることになります。高木さんも潔白であるのなら、『証明しようがない』『忘れた』ではなく、できる限りの証拠を挙げてきっちり否定しないとこのまま語り継がれる可能性もあるのではないでしょうか」
(文=編集部)