小池百合子東京都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」は10月3日、都内で記者会見し、国政進出に向けた政党「ファーストの会」を設立すると発表した。この新党の代表を務める荒木千陽都議によれば、「小池氏は記者会見で出馬の意向はないと言っている。私たちから出馬の要請もしていない」
とのことだが、額面通りに受け止める人がどれくらいいるだろうか。
少なくとも私は、この言葉を真に受けることは到底できない。なぜかといえば、小池氏は日本初の女性総理になりたいという欲望をまだ捨て去っていないように見えるからだ。しかも、最近行われた自民党の総裁選に高市早苗氏と野田聖子氏が出馬し、とくに高市氏が存在感を示したことは小池氏にとって耐えがたかったはずで、嫉妬で歯ぎしりしていたのではないかと勘ぐりたくなる。
おまけに、以前この連載で指摘したように、小池氏は「スポットライト症候群」であると同時に「ゲミュートローゼ」である可能性が高い。
小池氏が強い自己顕示欲の持ち主であることは一目瞭然であり、常に注目を浴びていないと気がすまない「スポットライト症候群」と呼んで差し支えないだろう。このタイプは、ドイツの精神科医クルト・シュナイダーが「精神病質人格」の10類型の1つとして挙げた「自己顕示欲型」に該当する。
シュナイダーは、「自己顕示欲型」について「実際あるより以上によく見えるようにと望み」「あらゆる種類の詐欺並びに欺瞞が問題となる」と述べている。昨年刊行されてベストセラーになった『女帝 小池百合子』を読むと、さもありなんという感じである。
「自己顕示欲型」は、どうすれば自分が注目を集められるかを第一に考えて行動する。だから、開催都市の首長として晴れ舞台に立ち、世界中からスポットライトを浴びることができた五輪が終わった以上、もう東京都知事でいる必要はなくなったのではないか。これから、日本初の女性宰相を目指して邁進することは十分考えられる。
非常に強い意志
そのうえ、仲間や同士を切り捨てることなどものともせず、のし上がってきたことからもわかるように、小池氏は罪悪感も良心の呵責も覚えない「ゲミュートローゼ」である可能性が高い。2017年に「希望の党」を設立した際、ジャーナリストの横田一氏の質問に小池氏が「排除いたします」と平然と答えて失敗したことは記憶に新しいが、あれは図らずも本性が露呈したにすぎない。
「ゲミュートローゼ」は、意志が非常に強く、たとえ罪悪感と衝突しても、必ず自らの意志が勝つ。だからこそ、屍を乗り越えてのし上がることが平気でできるのだともいえる。
私の見立てが正しければ、今年7月に行われた東京都議選で、公示日の3日前に過労で入院しておきながら、投票日の前日に「都民ファーストの会」の候補者の応援に入ったのと同様のことが国政でも起きるだろう。具体的にいえば、もうすぐ行われる衆院選の直前の出馬である。
口実はいくらでも見つけられるはずだ。政府の新型コロナウイルス対策や経済対策を批判し、「やはり私が東京だけでなく日本全体を救わなければならないと思いました」とでも言えばいい。その根底に潜んでいるのは、日本で女性初の総理になりたいという欲望と自己顕示欲なのだが、小池氏は天才的に口がうまく、選挙に強いので、衆院選に出馬すれば当選するのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
石井妙子『女帝 小池百合子』文藝春秋、2020年
クルト・シュナイデル『精神病質人格』懸田克躬・鰭崎轍訳 みすず書房、1954年