10月23日、神奈川県海老名市は、来年4月からの5年間、市立図書館の運営を任せる指定管理者の選定結果を発表した。
選ばれたのは、現在も指定管理者である、レンタルのTSUTAYAを全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)に、新たに施設管理を担当する相鉄企業を加えた3社のJV(共同事業体)だった。
3年前、佐賀県武雄市に続く2番目のツタヤ図書館として新装開館した海老名市立中央図書館。同館の開館直前、武雄市でCCCが大量の中古本を購入していたことが発覚。海老名でも調査したところ、選書リスト約8000冊のうち半分が料理本で、付録としてタジン鍋やおろし金、メガネ拭きまで混入していることが判明した。さらに、アジアの風俗ガイド本など不適切な選書があることなども次々と明るみに出た。また、海老名市の図書館では、CCCによる本の“独自分類”が利用者に混乱を来し、「思想が違う」とTRCがJV離脱を表明(後に撤回)する騒動にまで発展した。
それだけに今回、TRCがどのような選択をするのかが注目されていたのだが、結果的にTRCはCCCとのJVは解消しなかった。これにより、同館は来年4月以降も従来通り中央館をCCCが運営し、地域館の有馬図書館をTRCが運営する分業体制の継続が内定した。
7月5日付当サイト記事『不祥事続出で有名なツタヤ図書館、海老名市が議論抜きで今後5年の委託継続決定か?』で報じた通り、海老名市はCCCに来年以降も運営を継続させるためのシナリオを、昨年から周到に準備していた形跡がうかがえる。
今回は、このニュースの裏側で、さまざまな思惑が蠢いていた半年間の舞台裏をレポートする。
議事録が1年以上更新なし
筆者が今回の件で最初に海老名市に異変を感じたのは、今年5月のことだった。
どこの自治体でも定期的に公表されている教育委員会の議事録が、なぜか海老名市のサイトでは1年以上もまったく掲載されていないことに気づいた。そこで市教委に問い合わせると、「掲載が遅れています」とのこと。
「いくらなんでも、1年以上も教育委員会の議事録が非公開のままなのはおかしい」と指摘したものの、「ただいま準備中」と繰り返すのみで埒が明かない。
そのうちに、来年3月末で更新期を迎える市立図書館の新たな指定管理者の募集を開始する予定としていた5月に突入した。それにもかかわらず、まだ募集要項すら発表されていないという異常事態。仮に、来期からCCCに代わって新しい指定管理者が運営を担当することになった場合、準備期間などを考慮すると、あまりにも遅すぎる。
何か不測の事態が起きているに違いない――。そんな直感がきっかけで、情報収集を続けていると、不可解なことが次々と判明した。