官製談合の影
ここで筆者が疑問に感じたのは、海老名市が「2つの図書館と公民館を一体的に運営する事業者の募集」にすることで、CCC救済になるのかということである。
CCCとしては、TRCが担当している学校図書館の支援業務まで担うとなると荷が重い面もあるかもしれないが、そんなことは気にせずに単独応募してしまえば、議会承認では紆余曲折があったとしても、市当局の強力な後押しで選定される可能性もある。
一方のTRCにすれば、3年前とは違って市民ホールや公民館、カフェ併設の図書館は、2016年11月に同じ神奈川県内である大和市にオープンした複合施設・シリウスを指定管理者として手掛けて成功させた実績がある。
同施設の来場者数は、1年間で300万人を記録していて、CCC管理の海老名市立中央図書館の約70万人(16年度)を大きく上回っている(ただし、シリウスは施設全体の入場者数)。海老名市で、TRCがCCCに代わって中央を担うことも問題ない。
さらに、議会のなかでも「TRCなら安心感がある」と考える議員も少なくないため、単独応募すれば、CCCとの一騎打ちを勝ち抜ける可能性は十分にある。
複数施設の運営を一体化した募集要項にしてCCCを救済するのならば、事前に行政が主導して事業者間の調整をしなければならない。応募はJVで行い、選定後はCCCが中央、TRCが有馬と門沢橋の複合施設を、それぞれ担うこととし、決してお互いに単独応募はしないというような密約が必要だろう。早い話、官製談合があって初めて成立するのではないか。
実際に、市内部では両社が激突しないよう中央と有馬を分離して、それぞれ別々に指定管理者を募集する構想も、ある時期までは真剣に検討された形跡がある。しかし、なぜか、この分離構想は立ち消えになった。その代わりのごとく浮上したのが、門沢橋改修に伴う複合施設の運営を、図書館の指定管理と合体させる構想だった。真相は不明だが、市当局には、募集開始を当初の計画から4カ月も先送りして準備しなければならないほど“切実な問題”があったことだけは間違いない。
ようやく図書館の指定管理者の募集が開始されたのは、当初の予定より4カ月遅れの8月下旬。9月末に一次審査が行われた後、プレゼンとヒアリングも含めた二次審査が10月10日、選定結果の発表は10月下旬に発表というスケジュールだ。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)
※後編に続く