ガチンコで競ったコンペで選定されたと思っていたら、実は最初からどこが勝つのか決まっている「出来レース」だった――。
ビジネスの世界では珍しくないことかもしれないが、それが巨額の税金が投入される公共のプロジェクトとなると、大きな問題を孕んでくる。
冒頭の図は、どちらも来年、南海和歌山市駅前に開館が予定されている新しい和歌山市民図書館のパースである。上は基本設計を担当したアール・アイ・エー(RIA)という設計事務所が昨年5月に市のリリースのなかで発表したもの、下はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)案で、市が同年12月にCCCを新図書館の指定管理者として決定した直後に発表したパースである。
細かい人の配置や柱の位置はやや異なるものの、どちらも手が届かないくらい高い位置に書架がそびえ、奥にエスカレーターを配置した基本構図は同じだ。これほどよく似ているのは、果たして偶然なのだろうか。
指定管理者は最初からCCCに決まっていた?
実は、5月にRIAの基本設計が発表された時点で、和歌山の新しい市民図書館の指定管理者は、すでにレンタル大手TSUTAYAを展開するCCCに決まっていた――。そんな出来レース疑惑を指摘する声が絶えないのだ。
そもそもCCCは、図書館の運営者としては悪評だらけだ。佐賀県武雄市図書館では、大量の古本を購入していたことが判明するなど、住民訴訟を提起されている。神奈川県海老名市立中央図書館でも、図書の独自分類が大混乱をきたし、共同事業体として一緒に市立図書館を運営する図書館流通センター(TRC)からは独自運営を公然と批判された。
ツタヤ図書館をめぐっては、ずさんな運営に怒った市民らから次々と住民監査請求が起こされており、指定管理者として内定していた愛知県小牧市では2015年10月、住民投票で計画案が否決される騒ぎもあった。
このように各地で波紋を巻き起こしたCCCを、あえて指定管理者として選定した和歌山市には、どのような裏事情があるのかと疑惑の目を向ける向きが少なくない。
ある図書館関係者は、こう話す。
「和歌山市民図書館の指定管理者は公募され、業界最大手のTRCとCCCの一騎打ちになりましたが、結果はCCCの圧勝でした。市は、最初からCCCに決めていたのではないかと囁かれています。CCCがRIAによる駅前再開発計画を持ってきたからです。市は、CCC流の賑わい創出を目的としたツタヤ図書館のほうが、巨額の補助金を得られるので有利と判断したのでしょう」