大手遊技機メーカー「ユニバーサルエンターテインメント(UE)」にとって、今後の経営権の行方を左右する重要な証人尋問が、9月14日、東京地裁で行われた。
証言したのは、岡田知裕氏(51)と妹の裕実氏(49)。父はUEの創業者で前会長の岡田和生氏(75)である。和生氏が昨年6月末の株主総会でUE会長を解任させられたのは、兄とUE現経営陣が結託した上で、妹を巻き込んで持ち株会社「オカダホールディングス(オカダHD)」の経営権を奪い、和生氏を放逐したからだった。
岡田前会長は反撃に出た。裕実氏の離反は兄・知裕氏の誤導によるもので、「会社経営に無縁の裕実氏の考えではない」と読んで裕実氏を説得。裕実氏にしても、「まさか、父が会社を追い出されるとは思わなかった」として、オカダHDの株式の返還を求めた。それに対して知裕氏は、自らが原告となって、裕実氏を被告に信託契約が有効であるという確認訴訟を東京地裁に起こした。裕実氏は、その後、オカダHDの所在地である香港で、株式の信託契約が無効であるという訴えを起こしている。
信託契約とは、オカダHDの株を約10%持つ裕実氏が、約44%を持つ知裕氏に信託譲渡したというもの。オカダHDは、UEの株を約7割持つ大株主。2人合わせて約54%となり、岡田前会長の約46%を上回った。だが、裕実氏が兄を離れて父につけば、結果は逆となる。知裕氏はオカダHDから排斥され、その支持のもとUEの経営権を奪った富士本淳社長ら経営陣は、逆に会社を放逐されよう。「リア王」に擬せられた岡田前会長だったが、娘の気持ちを取り戻したわけである。
「意図せざる信託契約」
法廷に立つ裕実氏は、「意図せざる信託契約」であることを強調した。まず被告側代理人から、次に原告側代理人から質問があったが、最も象徴的だったのは、裕実氏が「信託が何を意味するかわからなかったものの、兄を信頼してサイン、押印した」という発言を繰り返したことだった。交わされた文書は「株主間契約書」「株式管理処分契約書」「合意解約契約書」「株式管理処分信託契約書」などである。裕実氏は、知裕氏に「父が不正をやって、UEがつぶれるかもしれない。だから信託契約が必要だ」と言われ、狼狽して書類にサインしたという。