CCC更新のための工作
5月下旬になって、ようやく市教委の議事録が更新されたが、1月に図書館の指定管理制度の継続を決定した際の市教委の議事録については相変わらず非公開のままだった。ただし、そのときの会議資料だけは公開されており、そこでは昨年11月に行われた「第三者評価」を基に、市立図書館を指定管理者制度に移行したことで、「めざましい成果が出た」とCCC運営に高い評価をしていたのだ。
ちなみに、前年に実施された第三者評価は、前出の7月5日付当サイト記事でも詳報したとおり、なぜか2017年度のみを対象とした不可解なものだった。CCC運営の中央図書館は、ほとんどの項目で5点満点の4点以上の高得点をマーク。新装開館当初から、「Pマーク返上問題」「著作権侵害事件」「Tカード個人情報流出疑惑」など、切れ目なく続出した不祥事は、すべてなかったことになっているような採点に首をかしげる人も多かった。
この評価を基にして、市教委は「市立図書館の指定管理者制度はうまくいっているので継続する」との結論を1月に導き出しており、この時点でCCCとの契約更新の下地はほぼ完成しつつあったといえる。
CCC単独では応募不能
だが、6月に入ると事態は急展開を迎えた。TRCが担当している有馬図書館に併設されている門沢橋コミュニティーセンター(コミセン)を改修する計画が急浮上した。そのうえで、図書館と公民館を複合施設として、一体的に管理運営する議案が議会に提出されたのだ。門沢橋コミセンは、運営を任されていた地元の自治体が高齢化のため継続困難になったとして、隣の図書館と一緒に民間に任せようという話になったようだ。
図書館の指定管理者募集が大幅に遅れていたのは、この門沢橋コミセンを指定管理に移行するために必要な条例などを逐一整備していたためだったことが、このとき判明した。
古い建物の公民館を改修し、図書館を一体的に運営する計画に、いったいどんな意味があるのか――。筆者は当初、複合施設に改修してリファインすることで、施設の魅力向上の施策を急遽付加したのだろうととらえていた。
ツタヤ図書館第1号を誘致した武雄市は昨年9月、CCCとの契約更新前のタイミングで、隣接地に新たに総事業費4億8700万円かけて「こども図書館」をオープンした。自治体が全額負担して再度リニューアルの話題を振りまくことで、減少の一途をたどっていた入館者数の回復を図った。それと同じような施策を、海老名市も図書館と公民館の複合施設の改装によって実現しようとしているとみえたためだ。
だが、ある市議会関係者が、「もっと切実な問題がある」と打ち明けてきた。「いくら市長がCCCにやらせたくても、CCC単独では指定管理者に応募すらできないんです」と言うのだ。詳しく聞くと、驚きの事実が判明した。
「仕様書に規定される『海老名に精通したスタッフ』はTRCしか雇用しておらず、また第三者評価でも指摘されていたように、CCCは中央館で基本協定に定められた司書資格率50%すら未達成だったのでアウトです。たとえ、それらをクリアして選定されたとしても、CCC単独管理では議会承認までスンナリいくとは思えません」(市議会関係者)
市当局がいくらCCCのこれまでの行状を「大目に見た」としても、市長派のなかにすら「CCCはけしからん」という議員がいるため、もしTRCが離脱してしまったら、CCC単独では指定管理者として選定はされても議会承認が難航するかもしれないという。CCCに運営を続けさせるためには、TRCとのJVを維持させるしかない。そこに、ちょうど門沢橋コミセンの老朽化に伴う補修の話が出てきたので、それとセットで指定管理者の募集を始めたのではないかと指摘するのだ。
このようにして市は、中央と有馬の2つの図書館に加えて公民館の運営も担い、さらにはTRCが担当していた学校図書館の支援事業も含めた業務を、トータルにこなせる事業者を募集することにした。
「まもなく発表される仕様書には、『有馬図書館と門沢橋コミセンを一体的に運営する』という条件が入るでしょう。そして、これら3つの施設を一括して運営するJVには、CCCとTRCに加えて、施設管理を担当する地元の有力企業の相鉄企業が入るでしょう」
この予想は的中することになるのだが、このときはまだ、果たして市当局がそこまであからさまな“CCC推し”をするのだろうかと、筆者は半信半疑だった。