日本アムウェイ合同会社は8月1日、宮城県南三陸町に「アムウェイ・ハウス」をオープンさせた。開所式には、地元の佐藤仁町長のほか、米国大使館のマーク・J・デイビットソン広報・文化交流担当公使らも訪れた。南三陸町観光協会の事務所も常設され、観光や視察の受け入れ、自然体験プログラムなどが行われる計画。
この「アムウェイ・ハウス」は、特にコミュニティの再興に主眼が置かれて企画された。可動式で30人を収容できるコミュニティスペースを3部屋用意したほか、対面型キッチンやバリアフリートイレも設置し、ウッドデッキはイベントの際の客席としても活用できる。日本アムウェイのマーク・バイダーウィーデン社長が、社員ら関係者に自宅に眠っている児童書の寄付を呼びかけ、約1000冊を集め、ハウスに贈った。
地域の住民に集まってもらい、また、地域外からも来た人にも活用してもらいたい考え。佐藤町長は「震災前には1万7000人だった人口が今は1万人を割った。今後は、隣接している商店街への経済効果も考えれば、交流人口を増やしていかなければならない」と語った。昨年10月に日本アムウェイ側から町に対して復興支援の声をかけ、佐藤町長から「人が集まる研修施設の設置で協力してほしい」との依頼を受けたという。
ハウスは木造で東海大学の杉本洋文教授の設計。骨組みは米国材、仕上げは日本材を活用した。「東北には豊かな山林があり、木を使うことによる復興支援をイメージした」と杉本教授。模型作りなどで学生が徹夜しながら手伝った。復興再開発が進めば、ハウスは移転する可能性もあるため、解体して運んでも移転先で再び組み立てしやすい設計にしている。杉本教授は被災地での公民館建設などの設計を支援しており、公共施設を木造建設で推進していきたい考えを持っている。
今後は、福島県内で生活する家族を招待する「福島キッズプログラム」や、夏休みの自由研究のネタを提供する「南三陸とあそぼ」などのイベントも予定している。
こうした民間企業1社だけの取組みの影響は微々たるものかもしれない。しかし、政府に頼るだけではなく、こうした民間企業のCSRによる小さな積み重ねも被災地の復興を促進させることは間違いない。お城の石垣は大きな石と小さな石がかみ合って安定した丈夫なものができている。これと同様に、政府が行う大きな復興プロジェクトと草の根的な復興支援がかみ合って、再興が進むであろう。
アムウェイというと、日本での一般的な企業イメージは率直に言って良いとは言えない。末端での売り方に問題があるケースもあるからだ。ただ、アムウェイ本体は優良製造業であり、米国本社のスティーブ・ヴァン・アンデル会長は全米商工会議所会頭を務め、本社があるミシガン州グランドラピッズでは、CSR活動の一環として大規模な小児医療などの病院を建設、地域医療に貢献している。
日本アムウェイも東日本大震災復興には力を入れており、義援金4 億円の寄付のほか、被害の大きかった小中学校向けに設備や教材を寄贈したり、東北の高校生の短期留学支援を実施したりしている。米国本社のダグ・デヴォス社長もすでに2度、被災地を訪問している。
(取材・文=井上久男/ジャーナリスト)