衣料品通販大手「ZOZO」創業者で実業家の前澤友作氏が、申込者全員に500円、1000円、5000円、1万円、10万円、100万円のいずれかが当たる「宇宙から “お金贈り”」を12月19日から始め、大きな話題になっている。
キャンペーンページにアクセスし、LINEでログインしてルーレットを回すと、当せん金額が決定するという流れ。当せん金は電子マネーで提供されるという。
前澤氏は、ZOZO社長を退任したあとの2019年1月以降、たびたび「お金配り」を実施してきた。賛否両論あるものの、これまでに数十億円もの規模でお金は配られてきているといわれている。
その一方で、まるで前澤氏に便乗するかのように「フォローした人全員に100万円あげます」「リツイートした人に300万円あげます」などとして、Twitter上でフォロワーを集めようとするアカウントが急増している。
「自分は末期がんに侵されている投資家で、生きている間に資産を配りたい」など、多額の現金を持ち合わせているが、使いきれないのでお金を必要としている人に配りたいという趣旨のツイートが多い。
それらのツイートには大金の写真が添付されており、実際に資産家であるかのように見せているが、インターネット上で画像検索すると同じ写真が見つかることから、その写真を転用した可能性が高く、アカウントの所有者が資産を実際に持っているとは考えにくい。
また、数十億円の残高があるゆうちょ銀行の口座情報の写真を添付しているツイートも散見されるが、ゆうちょ銀行の貯金の預入限度額は1300万円(財産形成定額貯金、財産形成年金定額貯金、財産形成住宅定額貯金については別枠で550万円まで)であるため、この写真は明らかに加工したものだ。
つまり、これらのツイートは、「お金を欲している人」「騙されやすい人」の情報を集めるためのものと考えられる。そこで集まった人に対し、「お金を贈るので住所や口座番号を教えてほしい」などと連絡を取り、個人情報を集めるような手口も十分にあり得る。
だが、このようなツイートが後を絶たないどころか、一向に追及される気配がないのはなぜなのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように解説する。
「これらのツイートは、間違いなく“騙されやすそうな人の情報”を集めるための手段でしょうね。個人情報保護法は、『住所、氏名、連絡先』などの個人情報を取得する際は、たとえ1件であっても『目的』を明確にしておかなければならず、目的外使用は禁止されているのですが、この『目的外使用』については罰則がないため、取り締まりができないのです。しかし、こんなアホなツイートに乗っかってホイホイ情報を伝える方もアホなので、どっちもどっちと思いますがね」
つまり、不当に個人情報を集めて目的外使用をしたとしても、罰則がないために、取り締まり自体が行われていないのだ。もちろん、その個人情報に基づいて特殊詐欺などが行われれば警察も捜査に動くのだろうが、ツイートに乗せられてしまっただけでは、“騙されたほうも悪い”と思いあきらめるしかないのかもしれない。
(文=編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)
●山岸純/山岸純法律事務所・弁護士
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。