中国の人気女優、トン・リーヤー(佟麗婭)さん(38)が、中国中央放電視台(CCTV)を運営する中央広播電視総台局長で、中国共産党中央宣伝部の慎海雄副部長(54)と再婚した――そんな報道が中国内外のネット上で波紋を広げている。
香港紙・明報などが伝えた。両人とも既婚者であったこと、離婚したタイミングなどから、中国国内では「2人が再婚する前に不倫関係にあったのではないか」との憶測が流れているようだ。読売新聞オンラインが28日に公開した記事『中国の人気女優、党高官と再婚…不倫の憶測に当局は情報統制か』は、「トンさんの再婚は公表されておらず、中国のSNSでは関連情報が検索しにくくなっている」と報じる。
一方、中国資本IT企業の日本法人に勤務する中国人幹部は次のように指摘した。
「日本国内の報道では『不倫』にのみ焦点を当てていますが、中国国内ではトンさんの出身が新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州イリ地区グルジャ市出身のシベ族である点も注目を集めているようです。漢族の中国共産党幹部が、ウイグル自治区出身者を愛人にしていたとなれば、中国国内の民族問題を刺激しかねない問題だからです。政府による情報統制が敷かれてもおかしくはありません」
トンさんは人権侵害疑惑のあるウイグル族ではなくシベ族
トンさんの出身地域であるウイグル自治区のウイグル族の人権問題が、深刻化する米中対立の主な争点になっていることは言うまでもない。
だがこの点に関しては韓国ソウル経済新聞が29日、北京特派員発の記事『‘불륜설’ 여배우 퉁리야는 위구르족? 한족? 만주족? 시버족?..복잡한 中 민족문제[최수문특파원의 차이나페이지]』(「不倫説」女優トン・リーヤーはウイグル族? 漢族? 満州族? シベ族?…複雑な中国民族問題)が詳しく解説している。
同報道ではシベ族はウイグル族とは異なる部族で、どちらかというと満州族に近い点を指摘する。満州族が皇帝に就いていた清朝時代に、占領した新疆ウイグル地区の円滑支配のため、移住した満州族が同地域のシベ族のルーツであることを解説。そのうえで、漢民族によるウイグル族や朝鮮族などへの差別的な中国国内の状況に触れ、「もしトンさんがシベ族ではなくウイグル族だったら再婚は可能だったのか」と疑問を呈している。
2021年は張高麗・前筆頭副首相との不倫関係を告発した後、消息不明になっていた女子プロテニス選手、彭帥さん(35)の事例も世界中に大きな反響を与えた。前述の中国系企業日本法人幹部は次のように話す。
「中国国内では共産党幹部の不貞行為や政府関連の大企業内でのパワハラ・セクハラに対してインターネット上でたびたび怒りの声が上がりました。つまり、こうした問題に対する中国国民の関心は高いのです。関心が高ければ高いほど、政府は情報統制を強めます。しかし、情報が規制され、事実が隠されれば隠されるほど知りたくなるのが人間というものですから、さらなる憶測を呼ぶのです。
日本のことわざ、『人の口に戸は立てられぬ』です。そういう部分は日本人も中国人も変わりはなく、今回のトンさんの件もいろいろな切り口でネット上で騒がれるのではないでしょうか」
北京オリンピックの開幕も迫っている。中国共産党指導部は相次ぐ醜聞にどう対応していくのだろか。