予定される日程まで3カ月を切った参議院選挙(6月22日公示、7月10日投開票)を仕切る自民党の茂木敏充幹事長の評判が散々だ。東京五輪・パラリンピック推進本部の設置期間終了にともない3月末に閣僚枠が1減となる際、「閣内には堀内五輪相だけでなく、ほかにも働いていない大臣がいるから、どうせなら小幅改造をしてはどうか。セットで幹事長と政調会長も交代させたらいい」という話が首相官邸周辺で囁かれたほどだ。
何かと物議を醸す高市早苗政調会長はまだしも、茂木氏まで交代説が出る背景には、公明党とのギクシャクした関係がある。前任の二階俊博幹事長と違って茂木氏は就任当初から公明党とのパイプが細いといわれていたが、年明けには参院選での「相互推薦」をめぐり、公明党が怒りを爆発。要請していた公認候補への推薦を自民党がなかなか決めず、しびれを切らした公明党が「相互推薦による選挙協力を見送る」と言い出したのだ。
公明党が推薦を求めたのは5選挙区。それに対し、公明党が候補者を擁立しない、つまり自公の選挙協力が成立する選挙区は38。どう考えても、困るのは自民党だ。自民党内は「茂木幹事長は何をやっているのか」の大合唱となり、その後、自民党はなんとか公明党と関係修復を図り、「地方組織間の個別協議」という条件付きながら相互推薦を前に進めることで合意した。
この失態を挽回しようとして、茂木氏主導で公明党に「媚びを売った」(自民党中堅議員)のが、3月中旬に突如浮上したものの結局、見送りとなった「年金生活者に5000円給付」という経済対策案だった。
新年度の4月から年金額が0.4%減額されるのを補填するかたちで年金生活者に5000円を一律給付するというもので、自公の幹事長と政調会長の4人が揃って首相官邸に要望に出向くパフォーマンスまでしたのに、「たった5000円とは年金生活者をバカにしている」「参院選向けの露骨なバラマキ」などの批判が上がり、白紙となった。
「あの提案は、支援者に年金生活者が多い公明党向けに、茂木氏が考えたプラン。選挙協力でゴタゴタしたので関係改善に良かれと思ったのでしょうが、いかんせん金額が少なすぎたし、筋が悪かった。自公で一緒に総理に提案したはずなのに、世論の受けが悪いとわかると公明党は政調会長が『5000円給付案は自民党の茂木幹事長から話があった』と暴露して逃げた。茂木氏は恥をかかされた」(前出の自民党中堅議員)
「茂木氏対策マニュアル」
5000円という金額のセコさが墓穴を掘った側面もありそうなのだが、茂木敏充氏には「年金生活者はその程度でも喜ぶだろう」という傲慢さがあったのではないか。というのも、茂木氏は自民党内だけでなく霞が関でも「上から目線で人当たりがきつい」と有名。幹事長就任直後には、官僚たちが「茂木氏対策マニュアル」をつくって代々引き継いでいたことが報じられてもいる。
茂木氏は東大卒後、丸紅と読売新聞社に勤め、ハーバード大大学院(公共政策)に留学した経験を持つエリート。永田町でも一、二を争う自信家だといわれる。その性格は、選挙に向けた応援での地方回りでも垣間見えるという。
「支援者らに頭を下げているところを撮影されたくないらしく、メディアに取材させないそうです。選挙を仕切る幹事長なのですから、協力を求めて頭を下げるのは当然のこと。幹事長が地方に応援に入っている映像が流れれば、支持者もやる気になって組織が引き締まる。そうやって票を積み上げていくのに、何を勘違いしているのか」(地方の自民党組織の幹部)
参院選後の内閣改造に合わせた幹事長交代が、あるかもしれない。
(文=Business Journal編集部)