10日発売の「女性セブン」(小学館)は、ファッション評論家・ピーコ(77)が双子で弟の映画評論家・おすぎ(77)を自宅で介護していたものの関係が悪化し、現在は別々に暮らしていると報じた。ピーコは「セブン」の取材に対し「おすぎはもう死にました」と答えているが、実際には、おすぎは現在、高齢者施設に入居しているという。
テレビをはじめとするメディアで人気タレントとしても活躍していた2人。2020年には2人でレギュラー出演していたラジオ番組『おすぎとピーコのシスター・シスター』(KBCラジオ)も終了し、ここ1~2年はメディアで姿が見られる機会も減っていた。
「おすぎはタレントや文化人など業界人とも交流が広く、映画評論家の淀川長治とは一緒に映画やバレエを観に行く仲だった。ジャーナリストの筑紫哲也とも親交があり、『筑紫哲也 NEWS23』(TBS系)では一緒に映画紹介のコーナーをやっていた。1970~80年代の芸能界がギラギラしていた時代に業界に身を置いていた人といえる。一方、“おすぎです!”というセリフが耳に残る新作映画のテレビCMでも有名だが、少なくないギャラをもらって映画を宣伝する仕事なども積極的にしていたため、映画評論家としての中立性に疑問を投げかける声があったことは事実」(映画業界関係者)
ピーコがおすぎに行っていた老々介護は近年、高齢化の進展に伴い日本でも社会問題化しつつあるが、その難しさやトラブルを回避するために重要な点について、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表の鬼塚眞子氏に解説してもらった。
共倒れを防ぐために
介護の難しさは、介護を受ける人がどんな症状になり、どれぐらいの期間になるのか、神のみぞ知るところにあります。また、認知症は紛れもなく病気ですが、残念なことに根治する治療薬は現時点では発売されていません。このため、進行を完全に食い止めることはできません。介護をする人が、どうにかならないかと何度も何度もわかりやすく言い含めても、理解はできないのは、病気だからです。
認知症と診断されても、穏やかに過ごす人もいますが、おとなしかった人が怒りっぽくなったり、第三者を殴ったり、かみついたりすることも珍しくありません。お金を近所の人に取られたと妄想して交番に駆け込み、ご近所との大トラブルになった例もあります。子育て時代の自分に戻った世界で生きる人や徘徊をする人もいます。排泄もうまくいかず、家族がお夜中に2時間ごとに起されたり、排泄物で衣類や部屋を汚したりするというケースはよくあります。
こうなると介護をする人は、目を離すことも息抜きをすることも、眠りたい時間に眠ることもままならなくなります。介護をする人の気力、体力を考えると、老々介護には限界があり、特に家庭内で高齢者が一人で介護の世話をするのは、共倒れの可能性が高くなります。
共倒れを避けるための心構えがいくつかあります。豹変した家族に戸惑い、それを受け入れるのは難しいかもしれませんが、別人格になったと割り切ることです。また、一緒に住んでいない人が好き勝手なことを言うこともありますが、介護をしている人の大変さは他人にはわからないと思って、絶対に気にしないことです。
また「子どもには心配かけたくない」「親の情けなさを明かすようで嫌だ」と心身の不調を黙っていて、どうにもならなくなってから子どもに現状を伝える親もいます。しかし、どうにもならなくなってからのほうが選択肢も少なくなりますし、子どもの負担が大きくなります。子どもには早くから理解を求めておきたいものです。
行政へ相談を
では、具体的にどのように行動したらいいのでしょうか。
高齢者のなかには“行政などにサポートをしてもらうのは恥だ”と思う人もいますが、絶対にそうではありません。介護者、ときには他人の人生を守るためでもあります。高齢者の免許返納も叫ばれていますが、初期の認知症と診断されてから自損事故を頻繁に起こし、心配した妻から免許返納を勧められても耳を傾けず、その妻が第三者から警察に相談に行くよう勧められても、夫妻ともにすぐに行動できないというケースは珍しくありません。
一人で悩みや苦労を抱えず、行政の介護保険課や地域包括センター、警察などに相談に行って、ぜひ知恵を借りてください。また、「排泄問題が発生したら施設に入所させる」といった具合に、家族内で老々介護の線引きを決めておくことはとても大切です。
早くから施設探しを始めておくことも大切です。特に特別養護老人ホーム(通称:特養)は利用料の安さから人気があり、数年待ちのところも珍しくありません。介護保険の認定を受けたら、特養の申し込みもしておきましょう。
子どもがいない兄弟姉妹間の老々介護の場合、資産がない場合は行政に相談することになりますが、資産がある場合は、弁護士に相談して慎重に見極めながら、若い遠縁や信頼できる友人、知人を養子にして、民間介護事業者の世話になりながら養子に身の回りの世話をしてもらっている人もいます。
いずれにせよ、介護を受ける人の性格や症状は一人ひとり違います。一人で抱えるのではなく、早めの相談が重要であることに違いはありません。
(文=Business Journal編集部、協力=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)