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歌舞伎町タワーの騒動に続き…埼玉県から「女性専用トイレと女子更衣室が消える可能性」で物議

文=佐藤勇馬
オールジェンダートイレの画像1
Getty Imagesより

 今月開業した東京・新宿の「東急歌舞伎町タワー」に設置された「ジェンダーレストイレ(オールジェンダートイレ)」が物議を醸している。2月に渋谷区幡ヶ谷に設置された公衆トイレからも「女性専用トイレ」が消えるなどし、戸惑いを覚えている人が多いようだ。現在は都心を中心とした騒動だが、埼玉県が「可能な限り性別に関わらず利用できるエリア(トイレ、更衣室など)を設ける」との指針を示すなど、急激に全国に拡大していきそうな気配となっている。

 昨年7月にLGBTQ条例(性の多様性を尊重した社会づくり条例)が施行された埼玉県は、今月1日付で公開した「埼玉県が実施する事務事業における性の多様性への合理的な配慮に関する指針」と題する文書で、LGBTQなど性の多様化への配慮として、既存の施設・設備は「可能な限り性別に関わらず利用できるエリア(トイレ、更衣室など)を設け、その旨表示を行うものとする」とし、新設・改修の予定があるものは「性別に関わらず使用できるトイレや更衣室などの設置を検討する」とする指針を発表した。

 トイレのジェンダーレス化については、東急歌舞伎町タワーの炎上騒動が記憶に新しい。もっともトイレ利用率が高いとみられる2F飲食店エリアに女性専用トイレがなく、性別問わず誰でも使えるジェンダーレストイレしかないことがわかり、ネット上で「怖すぎる」「性犯罪が起きるのでは」「男女が隣同士の個室に入るなんて無理」といった声が続出した騒動だ。「声が届く距離に警備員が立ってるから犯罪が起きるおそれはない」「個室は完全密室なのでそれほど気にならない」といった指摘もあったが、Twitterで「中に入ったらトイレするわけでもなく中で突っ立ってる男性しかいなかった」といった動画付きのツイートが拡散されたことで騒ぎがより拡大した。

 埼玉県に話を戻すと、県が示した指針ではトイレだけでなく「更衣室」のジェンダーレス化にも触れている。現在の県の指針が修正されることなく採用されれば、近いうちに埼玉の多くの施設・設備から女性専用トイレが消滅し、さらに女性更衣室まで消えることになる可能性がある。

 東京と埼玉だけでなく、こうした動きは遠くない将来に全国に波及していくとみられている。経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用が制限されているのは不当な差別だと国を訴えた裁判で、「制限は違法ではない」とした2審の判決が最高裁で見直される可能性が出てきたと今月25日に報じられた。最高裁の判決内容によっては、トランスジェンダーの職場環境や施設のトイレの整備に大きな影響があり、トイレや更衣室のジェンダーレス化が全国的に加速していくことになるかもしれない。

 昨今は性的少数者への配慮意識が社会的に高まってきていたが、急に「女性用トイレが消える」「次は女子更衣室が」といった状況は唐突すぎるようにも思える。こうした急激な社会変化の背景には、5月19日から開催される「G7広島サミット」が影響しているとの指摘があるようだ。G7(主要7か国)のうち、日本だけが性的少数者への理解増進法案対応が遅れているとして、与野党双方からG7サミットまでに「LGBT法案」を成立させるべきとの意見があり、岸田文雄首相らが調整に動いている。

 こうした政治の動きによって、LGBTQへの配慮が大企業や自治体にとって命題となり、その象徴として「トイレや更衣室のジェンダーレス化」が急速に進んでいるのではないかとの見方があるようだ。性的少数者への配慮は間違いなく社会的な課題だが、このような慌ただしい変革は大きな反発を招きかねない。本来ならもっと慎重に話し合い、市民の理解を深めた上で進めていくべきことに思えるが……。

佐藤勇馬/フリーライター

佐藤勇馬/フリーライター

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

Twitter:@rollingcradle

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