衆議院議員選挙山口4区の補選に出馬した元参議院議員でジャーナリストの有田芳生氏が選挙期間中、「下関は統一教会(現世界平和統一家庭連合)の聖地」などと発言したことが炎上し、まったく鎮火の兆しが見えない。芸能人や著名人などもさまざまな見解を表明し、立場の異なる人同士がSNS上で口論となっている。
発言の主である有田氏は、自身の発言を批判したタレントの田村淳や国生さゆりに対し、裁判もちらつかせるなど、きな臭さすら漂い始めている。
事の発端は、有田氏が「この下関って統一教会の聖地なんです。聖なる土地なんです。今度の選挙戦においても、統一教会と深い関わりを持った国会議員、地方議員がこの山口を含めて何もなかったかのように活動している。こんな現実を皆さん変えていかなければなりません」Twitter上に投稿したことだ。選挙演説でも同様の発言をしている。
これを受けて田村は、「地元下関が統一教会の聖地だって!?聖地って神・仏・聖人や宗教の発祥などに関係が深く、神聖視されている土地って意味だよな?僕は支持政党無しだが、下関がカルト教団の聖地という印象操作をした事にムカついてるし、有田芳生氏やその発言を支持した議員を心から軽蔑します。下関はそんな街じゃない」と有田氏の発言を猛批判。
国生も「淳くんの怒りは理解できる。根拠なくヨシフさん『聖地』とか言っちゃった訳だし、軽蔑するよ。考えなしにそういうこと口するする人、どこにでもいるよね。かけがえの無いものを独りよがりでけなす人。ノリで言っちゃうダメ人。選挙中なんのに軽率過ぎる。そんな事も考えられないほど、お花畑なのかな」と、田村に追随した。
その後、野党支持者から田村と国生に向けて「有田氏は下関を統一教会の聖地とは言っていない」「統一教会の聖地にしてはならないと言っているだけ」「田村淳や国生さゆりは事実を捻じ曲げている」など非難の声が殺到。
これに乗るように有田氏は、田村や国生に対して「弁明の余地のない明らかな名誉毀損です。まずは前段階の対応をする方向です」などと法的措置を匂わせた。さらに、「統一教会裁判の弁護士から、僕が相談していないのに、名誉毀損にあたり、認定されるはずだから、訴訟を検討したらとメールが来ました。熟考します」として、弁護士から訴訟を促されていると明かした。
だが、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、有田氏にアドバイスを送った弁護士とは異なる見解を示す。
「訴訟を提起するようアドバイスした弁護士の意見も聞いてみたいところですが、これに対する田村さんのツイートは名誉毀損に当たりません。
まず、田村さんは『(有田氏が)下関がカルト教団の聖地という印象操作をした』と記載しています。そこで、有田氏のツイートを見てみると、『この下関って統一教会の聖地なんです。聖なる土地なんです』と記載があります。確かに、この後に続く文章(『こんな現実を皆さん変えていかなければなりません』)を読むと、全体としては『このまま下関を統一教会の聖地として好き勝手させたくない』という有田氏の意図を十分に読み取ることができます。
しかし、ツイートの前段において有田氏が『統一教会は下関を“聖地”としている』と指摘していることは事実です。また、『下関』が統一教会にとって、“聖地”かどうかはともかく重要な地域であることは、一般人にあまり知られていないし、そもそも事実かどうかもわからないので、『有田氏は下関をあたかも統一教会の“聖地”のように表現している』と表現することは、至極まっとうです。
(田村さんのツイートで)有田氏の社会的名声が低下したとも考えられず、田村さんは真実を指摘しているわけですから、名誉毀損は成立しません。
次に、田村さんの『心から軽蔑します』部分ですが、自己の感情を記載しただけで、有田氏に関する何らかの事実を指摘したり表現したりしたものでもないので、同じく名誉毀損は成立しません」
有田氏が「下関を統一教会の好きにさせたままではいけない」との趣旨で発言したことは理解できるが、現状について「下関は統一教会の聖地」と断言しているのは事実であり、田村や国生に矛先を向けるのは筋違いだろう。ちなみに有田氏は、件のツイートを削除しているが、発言を撤回はしていない。
(文=Business Journal編集部/協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)