旧統一教会の問題が未解決のまま報道が減っていくなか、“メディアでは出せない話題”がイベントの場でも議論されている。
筆者は12月3日、都内で旧統一教会の問題をより深掘りするためにシンポジウムを開催した。出演者は旧統一教会の問題を20年間にわたり追及してきた鈴木エイト氏、東京新聞記者の望月衣塑子氏、オカルト・陰謀論系のインターネットメディア「TOCANA」元編集長の角由紀子氏と筆者である。また、元ヤクザで政治活動家の田中正道氏が当日のSPを務め、発言もした。
これまでにも旧統一教会について議論するシンポジウムをたびたび開催してきたが、その都度、旧統一教会幹部と共に元信者を自称する客が来る。今回もその人物が来場し、シンポジウム後に鈴木氏に対して「(旧統一協会問題追及は)お手柔らかにお願いいたします」と頼んでいた。
そんななかでも、シンポジウムでは白熱した議論が繰り広げられた。
――国葬は旧統一協会の指示だったか?
鈴木エイト氏「それはわかりません。しかし、旧統一教会にとって“国葬に値するような偉大な政治家が旧統一協会を支援にした”という意義を持ったことは確かでしょう」
――山上徹也容疑者の精神鑑定が本来11月29日で終わるはずが、来年2月9日までに延長された理由は?(弁護側の要請により、延長期間が短縮される可能性はある)
田中正道氏「私も刑務所で受刑したことがありますが、精神鑑定中に精神薬を飲ませることがあります。山上容疑者をクスリ漬けにして“本物の精神病患者”とし、山上容疑者の主張が妄想だったということにすれば政府にとっては都合がよいでしょう」
首相経験者ら大物政治家も関与
――政治家への追及は不十分か?
鈴木エイト氏「現在、旧統一教会との関係性を追及されているのは、大物政治家が教団に差し出した小物ばかり、“捨て駒”です。現在、調査中ですが、菅(義偉・前首相)さんも関係が深いようです。菅さんには官房長官時代に旧統一教会と政治家との“繋ぎ役”をしていたことをうかがわせる傍証があり、旧統一協会北米会長は『ヨシヒデ・スガが首相官邸に招待した』と、韓鶴子総裁へ報告しました」
深月ユリア「麻生太郎さんも関係性が深いという疑惑があります。(旧統一教会の関連団体である)UPFが去年立ち上げた団体「Think tank2022」のパンフレット表紙に“Taro Aso”の名前が記載されていました。議員事務所は「関与していない」と否定しましたが、勝手にクレジットを使われているんですかね。また、麻生さんは「日韓トンネル研究会」顧問で麻生セメントも施行に関与を疑われています。
森喜朗(元首相)さんにも疑惑があります。森さんは出馬の際に岸信介(元首相)に応援されて以降、清和会重鎮です。首相時代に韓国の当時の大統領である金大中さんに日韓トンネル建設を提案しました。そして、旧統一教会と関わりが深い議員が多いのが文教族ですが、森さんも文教族です。文科省の外局の文化庁の宗務課が宗教法人を所管しています」
隠蔽された反日思想
――韓国語版の『文鮮明み言葉選集』がインターネット上に流出している。和訳する際に削られた反日の文言があるが、統一教会は“反日思想”を隠していた?(参照:『旧統一教会、驚愕の反日思想…「天皇と韓国の王が交差結婚」「首相を屈服させる」』)
鈴木エイト氏「日本の信者に触れるとまずいものは、日本語版の教義には載せないようにしているようです。韓国語版には“文鮮明が天皇陛下を暗殺したかった”ことも書かれていますし、過去には天皇陛下役の教団幹部が文鮮明に跪く儀式の存在も暴露されました。韓国で行われた日本人幹部修練会では、韓鶴子総裁が日本の最高指導者を屈服と教育の対象とするみことばを話していました」
角由紀子氏「私は文鮮明1周忌記念イベントで韓国本部を取材しましたが、(“反日”の部分が末端の信者に伝えられていないようで)“合同結婚式をすれば日本と仲良くできる”と思っている信者が多かったですね」
――政治家たちは“反共”のために、旧統一教会の“反日”教義に目をつむった?
鈴木エイト氏「教団は時代によってカメレオンのように主張を変えていきました。“反共”も日韓の保守派の政治家や右派勢力にすり寄るための後づけのイデオロギーですね。東西冷戦が終わり、反共の意義がなくなってからは“文化共産主義”という新しい概念を持ち出して、LGBTQや選択的夫婦別姓も“共産主義”だと主張しています」
――選択的夫婦別姓の否定も女性に不利になるが、旧統一教会は“エバ国家”である日本人女性を蔑視している?
望月衣塑子氏「合同結婚式で結婚した女性は“離婚してはならない”と教えられ、なかには家庭内暴力を受けたり、勝手にクレジットカードを使用されても我慢させられるなど、酷い目に遭っている女性たちもいました」
男尊女卑の思想が色濃い教義
とある旧統一教会員が、主に信者向けと思われるSNSに発信した“教義”には、家父長制の思想が顕著に表れていた。
「夫の心に住みたい妻が天国に行く女性です。夫以外の人の心に住みたいと思うのが霊的堕落です。世界平和統一家庭連合(家庭連合)でしか、この事は言わない」
「夫が理解してくれればいいのに、などと考えてはいけません。夫が理解してくれなくても、夫を愛して尽くしていく道です」
「“み言葉”を夫は分かっています。男性の中には“み言葉”が入っています。原理試験に合格しない妻を、夫は一晩で原理講論を読んで指導してくれます。天使長には、み言葉とか思想はインプットされています。社会的に上に立っている男性には、どんな女性が理想かは、学ばなくても分かっている。見比べなくても分かっている。自分の妻がどのレベルか分かっている。友人の家に行ったら、どちらの料理が美味しいかも分かる。どんな女性が妻らしい女性か男性は分かるのです。
しかし、女性はどんな男性が素晴らしいかは、分からないのです。自分の夫を見れば、“神様を見るようです”、とならなければいけません。“夫と会う時には1000拝敬礼をして会っています。だって神様ですもの”」
韓鶴子は文鮮明が大嫌い?
――文鮮明が亡くなり、韓鶴子が総裁になってから教団は変わったか?
鈴木エイト氏「韓鶴子は三男との不動産訴訟で敗訴して資金が無くなってから、日本人信者からますますお金を搾り取るようになりました。
また、実は韓鶴子は文鮮明が大嫌いだと思います。文鮮明が亡くなった瞬間に教団の独裁者となり、“文鮮明色”を消すために韓国教団本部に文鮮明より巨大な像(4.3メートルほど)を建てました。(母が熱心な統一教会信者で、13歳の時に文鮮明に見初められ)17歳で41歳の文鮮明と結婚させられ、積年の恨みが募っていると思います」
旧統一教会HPには文鮮明と韓鶴子が仲良く手を繋いでいる写真ばかり掲載されているが、それは信者に向けた建前ということだろうか。韓鶴子は文鮮明と結婚させられてから、4回の帝王切開をし、14人の子供を産んでいるが、女性として心身共に辛い人生だったのかもしれない。
旧統一教会関連の動画サイトには、老いた文鮮明が韓鶴子と話し合って七男を後継者とする遺言書を書こうとするが、“真の母”である韓鶴子が実権を握るようにと強気で圧しきられて、酷く不機嫌に怒っているように見える動画がアップされている(https://youtu.be/6c2JN0-ewLo)。
――旧統一教会は解散するか?
鈴木エイト氏「解散すると思います。韓国との関係を切って存続する、という方法もあるでしょうが、難しいでしょうね」
――解散して宗教法人格がなくなれば、被害者は旧統一損害賠償請求しづらくならないか?
鈴木エイト氏「請求先が任意団体となるか個人となるか、請求できなくなるということはないと思います」
―被害者救済法案について、与野党はどこで折り合いをつけるべきか?
鈴木エイト氏「被害者弁護団とも話しましたが、(与党が追加した自由意思を抑圧しないように配慮すべきとする)“配慮義務”だと、裁判を起こさなきゃ適用されにくくなります。マインドコントロールの定義は難しいですが、具体的な事例ごとにどうするか、条文を制定すればよいのではないでしょうか。
今さらですが、本来は旧統一教会だけに限定した“被害者救済法案”にして、それ以外の宗教団体については後から議論すべきではないでしょうか。すべての宗教にまで範囲を広げてしまったから、どこで折り合いをつけるかが難しくなっています。公明党やそのほかにも、政府と繋がりのある宗教団体とも綱引きとなってしまっています。何より、法案が成立しても過去に被害を受けた人々が救われるわけではないので、いかに被害者を救えるか、もっと考えるべきです」
被害者救済法案を本当に“被害者が救済される法案”にする、“大物政治家”の責任追及など、旧統一教会問題はまだまだ解決すべきことが山積みである。
日本社会は、大きな社会問題が起きても、メディアが報じなくなると数カ月後には何事もなかったかのように忘却される傾向がある。年の瀬も近いが、「教団を解散させるから、この問題も忘れましょう」「山上容疑者は精神がおかしいから、仕方ない事件だった」という気風になることだけは避けたい。