●国や地方公共団体の広報部門化する記者クラブ
選ばれた第2の理由は、記者クラブ批判だ。
「日本には、記者クラブという新聞社や通信社、テレビ局で構成される組織があります。これは、主要な国の機関、地方公共団体の機関ごとに設置され、例えば『国会記者会』『司法記者クラブ』『警察庁記者クラブ』『東京都庁記者クラブ』などとがあります。
記者クラブは庁舎内に『記者室』という名称で広大な執務室を与えられており、賃料も水道光熱費も支払っていません。ちなみに、国会記者会は『国会記者会館』という名称のビルをまるごと与えられています。
記者室には、記者クラブの世話をする公務員が常駐していますが、もちろん彼らの給料は税金です。つまり、記者クラブは国や地方公共団体の『広報部門』といっても過言ではありません。
私のようなフリーランスは、記者クラブに加入することや記者室を利用することが認められていません。それ自体は構わないのですが、長年、国や地方公共団体は記者クラブに対してのみ、記者会見を開いたり、資料を提供したりしてきました。
最近は、一部のフリーランスが記者会見に参加できるようになりましたが、これも理不尽な条件がいくつも付けられ、それらをクリアしなければなりません。
例えば、私は何度も「首相の記者会見に参加したい」と要請していますが、首相官邸は『内閣記者会(記者クラブ)加盟社などの推薦状がなければ認めない』と拒否しています。
日本では、首相の記者会見が“一見さんお断り”の会員制バーのようです。実は『自分が推薦状を書いてもいい』と言ってくれる新聞記者もいるのですが、記者会見が会員制バーのようなものではいけないと思い、私はあくまでも推薦状なしでの参加を求めています。
なお、首相の記者会見に参加しているフリーランスが手を挙げても、司会者の内閣広報官が指名しないため、質問ができないという状況が続いています」
●警察庁「フリーランスは暴力団組員やテロリストと同じ」
寺澤氏の発言内容で印象的だったのは、警察庁のフリーランス記者に対する見方が、権力と記者クラブの癒着を表していることである
「警察庁はいまだにフリーランスが記者会見に参加することを拒否しています。理由はセキュリティ対策とのことです。これに対して2010年、私は自分を警察庁の記者会見に参加させるよう求める仮処分を東京地裁に申請しました。
すると警察庁は、『フリーランスなどという者は暴力団組員やテロリストと同じだから、そのような者を記者会見に参加させるわけにはいかない』という趣旨の主張をしました。
結果としては、東京地裁、東京高裁、最高裁とも、その警察庁の主張を認めました。
裁判所もフリーランスに対して差別的な扱いをしており、記者クラブの記者に対して裁判傍聴の記者席を用意し、判決要旨などの資料を提供していますが、フリーランスにはそれらが与えられていません。私は、これらを求めて2度裁判を起こしました。
しかし、裁判所は『記者席の用意や資料提供は、裁判所の義務ではなく便宜供与である。誰に対して便宜を供与するかは裁判所の自由だ』との判決を下しました。
要は、『あなたも便宜供与を受けたかったら、そういう気にさせる報道をしなさい』ということです」
寺澤氏は、記者クラブは「広報部門」と指摘したが、そればかりか、市民の批判から権力を守る“防護壁”として機能しているのだ。