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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

急増する女性消防団員、企業や学生の参加も増 縮小し続ける消防団で高まる存在感

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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 今の日本の状況をあらためて認識させられた。総務省が広報誌を利用して消防団員の募集を行っているのだ。過疎化や少子高齢化の進行、産業構造・就業構造の変化などで、地域防災の要となる消防団員が年々減少し続けている。そこで、消防団を所管する総務省が一役買って、自らの広報誌を使って消防団員の募集に乗り出したというわけだ。

 では、消防団とはどのようなものなのだろうか。消防団は、「自らの地域は自らで守る」という精神に基づいて構成された組織である。その団員は、普段はさまざまな仕事に就いている地域住民で、災害発生時には非常勤特別職の地方公務員として災害対応に従事する。

 同じ地方自治体の消防機関でありながら、消防本部・消防署に勤務する消防職員(いわゆる消防士)が専門職として給与を得ているのに対して、消防団員は別の仕事を持ちながら、災害時には自宅や職場から現場に駆けつけて活動を行うボランティア的なものだ。

 しかし、その活動範囲は幅広く、災害時の消火活動はもちろん、台風などでの水防活動や救助活動などに従事し、平時は各種訓練や防災啓蒙活動なども行う。

 団員数は2014年4月1日現在で約86万4000人おり、なんと専門の消防職員約16万1000人の5倍以上もいる。だが、冒頭で記したように、現在その数は減少の一途をたどっており、1990年には約99万7000人いたが、00年には約95万1000人、05年には約90万8000人となっている。

 減り続ける消防団員の支えとなっているのが、「消防団協力事業所」だ。これは企業が消防団を組織、あるいは消防団に参加し、企業の従業員が消防団員となるものだ。消防団員に占める割合は90年の57.4%から00年に68.2%、14年には72.2%まで高まっている。

 企業は団員の勤務時間中の消防活動に配慮し、特別休暇制度を設けるなどして消防団活動をバックアップしている。こうした消防団事業所は、14年4月1日現在で1万425カ所あり、総務省消防庁でも07年から「消防団協力事業所表示制度」の運用を開始し、企業の導入促進に力を入れている。

●女性と学生の団員数は増加中

 また、消防団を支えるもうひとつの柱が女性だ。90年にはわずか1923人だった女性団員は、00年に1万人を超えて1万176人になり、13年に2万109人、14年には2万1684人まで増加している。まるで、女性の社会進出を象徴するような増加ぶりだ。

 同様に、学生団員も消防団の一翼を担っている。06年に1234人だった学生団員は11年に2000人を突破して2056人に、14年には2725人にまで増加した。

 消防団の入団資格は各市町村の条例で定められているが、一般的には18歳以上で当該の市町村に居住しているか、通勤・通学をしていれば性別に関係なく入団できる。政府は13年12月に「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」を成立させた。同法では、消防団への加入促進や消防団員の処遇改善、装備の充実・強化などが規定されており、消防庁や地方自治体では消防団の拡充に向けた取り組みが進められている。

 都市部から離れれば離れるほど、本職の消防士よりも地域の消防団員が支えているというのが、地方の防災体制の実態だ。例年、3~4月は定年などにより消防団員の退団が増加する。減少の一途をたどる消防団員の獲得は、地域社会とって重要な課題だ。少しでも興味を抱いた人は、この機会に消防団に参加してみてはいかがだろうか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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