このドローンは、官邸職員の新人研修で屋上に上がった職員が発見したもので、いつ落下したのかは定かではない。発見されたのは、ドローン市場で世界トップシェアを誇る香港DJI社製の「ファントム2」という、4枚のプロペラとデジタルカメラを装備する機種で、今年1月に米国ホワイトハウスに侵入・墜落したものと同じ機種だという。
警察が化学テロを視野に入れて捜査を開始した理由について、全国紙公安担当記者は次のように指摘する。
「発見されたドローンには、発煙筒2本とプラスチック容器が取り付けられていました。プラスチック容器には放射性物質を示すシールが貼ってあり、中に入っていた液体からは、セシウム134とセシウム137が検出されたそうです。セシウムは自然界には存在しない物質で、ウランの核分裂から生成されます。つまり、ドローンを飛ばした人物が意図的にセシウムを混入したということです。ちなみに放射線は、容器直近でガンマ線が最大1マイクロシーベルトアワーですので、人体に影響がある線量ではありません」
警視庁公安部はこのような状況を受けて、前述の通り、公安部内に捜査本部を立ち上げたのだ。
「捜査本部は、労働運動や過激派『革マル派』を担当する公安2課に置かれました。皇室や政府機関にゲリラを行う過激派を担当するのは公安1課、国際テロを担当するのは外事3課。そのどちらでもない公安2課に捜査本部が置かれたことには、何か理由があるのかもしれません」(同)
警視庁が、本来はテロ事件を担当しない公安2課に捜査本部を設置した理由は、これからの捜査で明らかになっていくだろう。しかし、捜査本部が公安部に設置されたこと自体が、ドローン事件の重大さを物語っている。
ドローンの飛行高度や使用周波数、用途に関して政府が法整備を検討しはじめた直後に起こった、化学テロも懸念される事件。今後のドローン普及に大きな影を落としかねない。
(文=編集部)