大阪地検は、これから5億円にも上る裏金の使途を解明していくことになるが、大阪産業大学の理事長は、元検事総長の土肥孝治氏だ。「裏金の一部は、土肥氏の接待に使われた」という情報もあり、捜査の行方が注目されている。
この問題は、模擬試験受験料の余剰金をプールした裏金口座から、前校長と娘の個人口座に毎月30~50万円が送金されており、高級ブランドのバッグやスカーフの購入、ゴルフ、飲食など計約1億3000万円が不正流用されていたというものだ。前校長らは容疑を認めているが、問題はやはり土肥氏の存在である。
ある検事は、「検察官にとって、大物OBは単なる先輩ではありません。自分が退官後に弁護士に転じた際には、その後の仕事の元締めにもなるのですから、変な関係にはなりたくないのです」と語る。
幹部検察官OB、特に特捜部の大物OBには、大手企業幹部や政治家などの有力者が頼ってくることが多い。大物OBは、それらの弁護士仕事を自分の息がかかった後輩OBに分配する。特捜部の検事はみな、退官後はその流れに乗りたいと考えているのだ。
大阪において、土肥氏は後輩に仕事を分配する“巨大な元締め”だった。「関西電力をはじめとして、名だたる有力企業の顧問弁護士を務め、マスコミの人脈も広い。大阪高等検察庁、地検はもとより、大阪府警に対しても、いまだに隠然たる影響力を持っている」と関係者は語る。
大阪の検事で、土肥氏に弓を引くことを考える者など、一人もいないだろう。しかし、現実には捜査対象として対峙することになってしまったのだ。
土肥氏に関しては「飲食やゴルフで、巨額の接待を受けていたらしい。原資は、問題の裏金だ」という情報が出回っている。これをきちんと捜査しなければ、大阪地検特捜部は「不作為の作為」を問われることになるだろう。
「裏金が原資の接待を受けていた疑惑がある以上、事実関係の解明は必要不可欠です。土肥氏に裏金で接待を受けていたという認識があれば、業務上横領罪の共犯に問われる可能性もあります。非常にシビアな捜査になることが予想されますが、土肥氏に対する捜査をきちんとやれるかどうかが、今の検察の健全性を判断するいい材料になるでしょう」(フリージャーナリスト)
2010年の証拠改ざん事件で地に落ちた大阪地検特捜部。そこから再生できているか否か、大阪桐蔭の裏金事件が“リトマス試験紙”になりそうだ。
(文=編集部)