エボラが日本で流行したら起こる最悪の事態 誰が誰に何を指示できるのか?原発事故の悪夢
この状況は、日本も変わらない。外務省によると今年3月18日現在、WHOを通じて延べ17人の日本人専門家を派遣している。厚生労働省によれば、その任務は「エボラ出血熱対策に関する WHO ミッションに専門家として参加し、現地の疾病発生及び診療・対策状況等について調査及び評価を実施するとともに、必要に応じ助言を行う」ことである。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/af/af1/page23_001160.html
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10501000-Daijinkanboukokusaika-Kokusaika/0000069894.pdf
ボランティアと軍隊の重要性
この活動が、現地でどのように評価されたか筆者はわからないが、流行地域の住民が求めているのは、調査研究ではなく患者の治療・ケアだ。では、誰がこの任務を担っていたのだろうか。
それはボランティアと軍隊だ。ボランティアの代表が「国境なき医師団」である。昨年11月7日現在、6カ所のエボラ出血熱治療施設に合計251人の「海外スタッフ」を派遣し、3503人の感染者を治療している。
http://www.msf.or.jp/landing/201412_ebola_sp/?utm_medium=&utm_source=webtop_sp&utm_campaign=ebola_oct14
「国境なき医師団」とは、1968~70年にかけて赤十字の医療支援活動のために、ナイジェリア内戦中のビアフラに派遣されたフランス人の医師たちが、71年に設立したものだ。各国政府、および赤十字の煮え切らない態度に限界を感じたのが、設立の動機だという。それから44年。貧困地域や紛争地域を中心に、年間約4700人の医療スタッフが世界中70カ国以上の地域で活動している。92年には日本事務局が設立され、99年にはノーベル平和賞を受賞した。東日本大震災では、翌3月12日に現地入りして支援活動に従事した。
日米の政府機関とボランティア団体の間に、なぜこんなに大きな差があるのだろうか。
ボランティア組織と比較して、政府組織の融通がきかないのは当たり前だが、それですませてはならない。エボラ出血熱対策は、政府が関与することの弱点を象徴していると思う。それは、政府系の医療機関や研究機関では、生命の危険性が高い地域での仕事に従事するよう職務命令を出せないことだ。実際、エボラ出血熱の診療に従事した医療関係者の中には、感染により死亡した者もいる。昨年7月の段階で、医療関係者約100人が感染し、約半数が死亡したという。
http://www.sankei.com/world/news/140731/wor1407310032-n1.html
もちろん、逃げ出した医師や看護師もいる。独シュピーゲル誌によれば、シエラレオネの小児病院では、発熱搬送された4歳の男児が、のちにエボラ出血熱と判明したところ、大勢の医師・看護師が逃げ出したという。男児に接触した6人の医師、25人の看護師は隔離され、わずか4人の医師で120人の患者を治療することになったそうだ。
また、昨年8月にリベリアの首都モンロビアに医療支援に入った加藤康幸医師は「病院からは医療従事者がいなくなってエボラ治療以外の一般の医療行為もできない」「病院の管理職を除いてすべての医療従事者がストライキに近い状況でいなくなった」と語っている。おそらく、これが実情なのだろう。患者を治療する以前に、自らの安全を確保しなければならない。我々は彼らを責めることはできない。
http://www.sankei.com/life/news/141210/lif1412100019-n1.html