マンションは高コストな住宅
その理由は、まず新築マンションという不動産商品が、今の郊外住宅市場で成立しにくくなっているからだ。練馬や江戸川などで供給される新築マンションは、基本的に「住むため」に初めて住宅を購入する一次取得者向けである。需要層の年齢的なボリュームゾーンは30代の子育てファミリー。彼らの人口的なボリュームはかなり細っている。しかも、新卒時に就職難であったロスジェネ世代の最後尾と被ってくる。
さらに、彼らのライフスタイルはかつての主流であった「子育てする専業主婦(あるいはパート)と都心通勤の父親」という組み合わせは少数派となり、「正社員Wインカム&保育園キッズ」というスタイルがメジャーになりつつある。つまり、郊外のファミリーマンションは需要層を急速に縮小させた。
ただし、「子育てする専業主婦(あるいはパート)と都心通勤の父親」という伝統的な家族のライフスタイルを頑なに守りたいと考えている若年ファミリーが、一定数は存在することも確かなのだ。彼らの世帯年収は決して高くない。600万円から800万円あたりがボリュームゾーンだろう。そういったファミリーは、管理費や駐車場使用料というランニングコストがかさむ郊外型の新築マンションよりも、敷地は狭くとも駐車場のあるミニ戸建てを好む。新築での分譲価格にして4000万円前後だ。管理費等はかからないので、彼らの収入でも十分に購入できる。またローン返済の負担も重くはならない。
実のところ、郊外で供給されるミニ戸建ての建築費は、マンションに比べてかなり安い。
新築分譲マンションの建築コストは、郊外型の画一的な70平方メートル3LDKタイプでは2000万円前後だとされる。
これに対して、敷地面積と延床面積がともに80平方メートル前後の建売住宅の建築コストは、最大手のハウスビルダーレベルだと700万円。地場の開発業者が中堅のビルダーに発注する場合だと1200万円。大手ビルダーが請け負う、個人が施主の注文建築で約2000万円。今やマンションは高コストな住宅になってしまったのだ。
東京の郊外に残された生産緑地は、マンション向けの駅徒歩10分圏よりも、戸建てでも需要を見込める駅徒歩11分以遠が多いように思える。であれば、生産緑地が住宅に変わる場合は、マンションよりも戸建ての開発となるケースのほうが圧倒的に多くなるのではないか。