ここ数年、不動産業界に大きな影響を与えてきたイベントといえば、東京五輪。
しかし、東京五輪の開催は不動産の需給関係には直接影響しない。強いて言うのなら五輪関連の施設建設で、建築現場の人出不足を多少は助長したかもしれない。しかし、日本全体の建築需要から見れば、さほど大きな割合ではない。そして、すでにその大半はピークを越えた。
五輪終了後、不動産市場に大きな影響をもたらすイベントはない。ただ、ちょっとした制度上の変化が2022年に予定されている。期限立法として1992年に施行された生産緑地法の終了である。
ただ、これについては2018年に改正生産緑地法も施行された。詳細は省くが、所有者が生産緑地の税制上の特典を延長させようと考えた場合、10年単位で延長できる、というものだ。ただし、当然ながらその土地を農業やそれに類する用途に使用しなければならない。
農業というのは、今や従来のスタイルでは自立して存続できない産業分野と化している。農家が普通にお米や野菜を栽培しても、給与所得者の平均値を超える収入が得られない。
よほど効率的な生産体制を整えるか、高級和食用の限られた食材を生産するようなスタイルでないと、生き残れないのが現実。
23区内に残された生産緑地を見かけることは多いが、出荷レベルで農業を営んでいるようなところはほとんどない。何かしらの農産物を栽培していても、せいぜい自家消費プラスアルファのレベルではないか。そういった生産緑地の所有者が生涯を閉じて相続が発生した場合、農業を継続することはかなり困難であろう。しかし農業を行わない限り、制度上は宅地並みの固定資産税が課されることになる。
そういった背景を考えると、2022年以降を境に急激に生産緑地が宅地に変わっていくとは思えないが、徐々にではあるが確実にその用途が変更されることは十分に想定できる。
首都圏で見れば、生産緑地が多いのは練馬区、世田谷区、江戸川区だ。いずれも住宅地として転用できる環境や条件を備えている。
では、2022年以降はこれらの地域で新築マンションの供給が増えるのだろうか?
増えることは増えるかもしれない。しかし、相場観を一気に下げるほどの供給増は起こらないと私は考えている。