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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

マンションを「マイナス180万円」で売る…越後湯沢の“腐動産”で起きている不気味な事態

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
マンションを「マイナス180万円」で売る…越後湯沢の“腐動産”で起きている不気味な事態の画像1
越後湯沢駅(「wikipedia」より/Rebirth10)

 

 以前、私は自著の冒頭で、新潟県魚沼郡湯沢町リゾートマンションの状況を記し、当時大きな反響を呼んだ。その内容はおおむね以下のようなものだった。

 1980年代後半から90年前半の空前のスキーブームの影響で越後湯沢の街には50棟以上、戸数にして約1万5000戸ものリゾートマンションが建設、分譲された。当時は空前のカネ余り時代。ねこも杓子もスキーに興じるのがあたりまえだった。ゲレンデの前にマンションがあれば、なかなか予約がとれないホテルに宿泊するよりも、リゾートマンションを買えば、ゲレンデは我が物になる。誰しもがそのように考え、その需要をアテにした多くの不動産業者が群がり、越後湯沢の駅前から苗場スキー場にかけてリゾートマンションが林立した。

 バブル崩壊から30年がたとうとする現在、当時販売された多くのマンションの中古価格は10万円の値付けになっている。部屋の大きさとはほとんど関係なく「ひとこえ10万円」だ。分譲当時の価格からは100分の1どころかそれ以下であろう。バナナのたたき売りのような状況になっているのだ。

 原因は日本の少子高齢化や日本人のスキーに対する興味の減退だ。スキー人口は93年の年間1860万人をピークに減り続けている。日本は少子高齢化の渦に巻き込まれ、若い世代の経済力は大幅に減退。スキーに行く人口は2016年の調査では580万人。この23年間で3分の1以下に減少している(日本生産性本部「レジャー白書」)。

 その結果スキー場には閑古鳥が啼き、必要がなくなったリゾートマンションの価格は暴落してしまったのだ。ちなみに10万円とは上場株式の株価でいえば1円を意味する。流動性がないゴミと一緒、ということだ。

 さらにこうしたマンションで次に問題となるのが、所有者の多くが管理費や修繕積立金の支払いを滞納することだ。管理費が払われないことには、やがてエレベーターの保守点検もままならず、共用廊下の電気すら消えたままになる可能性だってある。ましてや大規模修繕なんてできるわけがない。使わなくなり、興味もなくなったマンションは急速にスラム化していく――。

 私が同書で警鐘を鳴らしたのは、こんな越後湯沢のリゾートマンションで生じている現象だった。

 その後、多くのメディアがこの越後湯沢のリゾートマンションの惨状を取り上げたが、一部リタイアした団塊世代などがマンションを買って住みついているという報道があった以外は、状況はほとんど変わらず、事態の解決には程遠い状況が続いていた。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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