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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

マンションを「マイナス180万円」で売る…越後湯沢の“腐動産”で起きている不気味な事態

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役

 最近世間では、「売れない」「貸せない」「自分も住む予定がない」三重苦の不動産を「負動産」などと称するようになった。まったく使い道がなくなっても、不動産は車などの耐久消費財とは違って捨てることができない。いらなくなったからといってこの世からなくすことができないのだ。建物は解体できたとしても、土地はどんなに引っ掻いてもこの世から消すことはできないのである。ましてやマンションのような区分所有建物では自分の部屋だけこの世から消し去ることはできず、永遠に管理費や修繕費用を負うことになる。このような状態になってしまうと、資産であったはずの不動産がカネを垂れ流す面倒な「負債」に姿を変えてしまうのだ。

 だが世の中では「捨てる神あれば拾う神あり」とも言われる。まさに、今回ダイレクトメールを送り付けてきた業者は、「拾う神」というよりも、負動産になるどころかほとんど腐りかけている「腐動産」に群がるバクテリアのような存在ともいえるだろう。バクテリアは腐乱死体を食べてしまうので、死体は自然に還っていくはずだ。

 では、彼らの狙いはなんだろう。

 おそらく、購入当初より30年以上がたち、すでに厄介者となっているリゾートマンションに困惑する(おそらく)高齢者と思われる所有者の弱みにつけこんで、カネを払わせて物件を取得する。そしてこれをリフォームして、スキーに興味を持ち始めた中国人にでも高値で売りつける作戦だと思われる。オーストラリアや欧米からニセコや白馬にやってくる外国人富裕層のスキーヤーは、越後湯沢には興味を示さない。越後湯沢は雪質が重く、彼らの「いいね」は得られないからだ。

 一方、最近スキーを始めた中国や香港のスキーヤーは東京から新幹線でアクセスできる越後湯沢なら、ただスキーをやりたいだけだから買ってしまう。平成バブル時の日本人と同じ思考回路だ。ここに付け込もうというわけだ。実際に最近では、越後湯沢のマンションを買いたいという中国などのアジア人が出始めているという噂も聞こえ始めた。

 また一方で、高齢者が不動産取引に無知であることに付け込んで、現金だけをまず口座に振り込ませて実際には売買手続きをしないで雲隠れする「振込詐欺」も横行していると聞く。

老朽化していく腐動産の成れの果て

 さて、実はこの話にはオチがある。業者が一生懸命送り付けてくるダイレクトメールは、ターゲットとするリゾートマンションの登記簿謄本を閲覧して、登記されている所有者宛に送られてきていると思われる。

 ところが最近では所有者の一部に相続が発生している。30年も前のバブル時代に買った中高年の所有者の中には、すでに亡くなっている人も多いのだ。相続人は親が残したこんな出血続きのマンションなんて相続したくない。それでも相続はされてしまう。

 結果、何をするか。登記をせずに放置しているのだ。相続登記をしなければ、相続したことを表明していないことになるので外部からは雲隠れできる。最近は多くの負動産が相続登記されずに、「所有者不明」状態に陥っている。マンションの場合は管理組合に相続をした旨の連絡もしないので、管理費や修繕積立金が未納になっても管理組合は請求先がわからずに困惑しているのが実態だ。だからせっかくのダイレクトメールも、現在の相続人の手元には届いていないケースが多いのだ。

 買手側も「半分騙し」だが、売手側も「半分隠蔽」の構図にあるのがこの話の裏側なのだ。ついに始まった不動産の「腐動産」化。そこで登場するのが腐動産を食いつくした挙句に、何も知らない新たな客に高値で売りつけるバクテリアたちだ。その先買った中国人がどうなろうと知ったことではない。ここに老朽化していく腐動産の成れの果てがある。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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