若いうちは資産運用よりマジメに働くほうが、はるかにリターンが大きいという鉄則
公的年金はある程度物価にスライドしていきますが、自分が持っているお金は何もしなければそのままインフレになった分だけ購買力が低下して、損をすることになります。退職者にとってインフレが最大の敵であるという理由がこれです。したがって、それまでに蓄えた資産でいかに購買力を維持するかを真剣に考えていく必要があるのです。
事実、私がかつて携わってきた「確定拠出年金」においても、若い年齢層の方は定期預金などの保守的な運用が多く、50代の方が投資信託などの比較的リスクのある運用商品を選んでいるという傾向もありました。通常考えられているのとは逆の現象です。
若いうちは“コツコツ投資”が一番!
もちろん、若いうちから経済知識や金融商品にある程度興味を持つことは大切です。世の中にはとんでもない金融商品を無知につけこんで売りつけてくる悪質な業者もたくさんいますし、新聞などに出ている金融商品の広告などでもよく読めば、ひどいものが随分あります。そうしたものに騙されないようにするためにも、正しい知識を身に付けることが大切で、できることなら若いうちから勉強するにこしたことはありません。
ところが、お金に関する勉強というのは、実際にお金を動かさずに机上の論理で勉強してもあまり役に立ちません。いわば水泳の本を100冊読んでも泳げるわけではなく、実際に水に入らなければ意味がないのと同じです。
そこで、ある程度運用できるお金ができる50代から勉強を始めるというのが現実的なのだろうと思います。では、若い人はまったく投資をしなくてもいいのかというと、そういうわけでもありません。私は毎月一定額をコツコツ積み立てて投資をするのが一番良いのではないかと考えています。これなら少額でも積立てていくことができますし、毎日の価格の動きが気になって仕事に影響が出るということもありません。
何よりも、たとえ金額が少額でも実際に経験することによって、価格が動く時の心理を体験するということがとても大切なのです。
私も時々、企業で50代の社員のみなさんを前にしてライフプランセミナーの講師をすることがありますが、その時によく「若いうちならともかく、もう定年近くなってこんなこと勉強してもしょうがないだろう」という声を耳にします。
しかしながら、決してそんなことはない、と私は思います。若いうちはハイリスク・ハイリターン、歳をとったら安全に、というステレオタイプな発想を捨ててみてはいかがでしょうか。
(文=大江英樹/株式会社オフィス・リベルタス代表)