民泊をめぐる動きが加速している。各種報道によると、まず2015年度中に政省令を改正して簡易宿所としての民泊を認める方向らしい。ここでは「延床面積33平方メートル以上」という規定を緩和して、ワンルームマンションでも営業を可能とする。その後、16年度中に旅館業法などの法令を整備して、民泊の規制を緩和する方針だと伝えられる。
一方、東京都の大田区では1月29日より民泊条例が施行された。こちらは周辺住民への説明や「6泊7日以上」などの規制が設けられている。分譲マンションの場合は、管理組合の意向を確認した文書の提出も義務付けられるようだ。大田区に続く大阪府などの自治体の動きも伝えられている。また、京王電鉄や大京穴吹不動産、アパなど民泊参入の動きを見せる企業も出てきた。
ありていにいってしまうと、それぞれの動きが錯綜して統一した方向が見えてこない。政府の中でも一定の規制を設けたい国土交通省・厚生労働省サイドと、緩和の方向を模索している規制改革会議との間で、微妙な温度差があるようだ。
この問題は喫緊を要する。すでに何十万戸もの住宅で、事実上旅館業法に違反している民泊が行われているからだ。ここで早急に一定のルールを定めて大きな流れをつくっておかないと、混乱するばかりではないか。それに、法があってもなきものがごとき状態を放置するのは、法治国家としてよろしくない。
警察庁の動き
なぜかあまり動きが伝えられないのが警察庁だ。
15年11月に、京都市内右京区で大規模に民泊を行っていた業者が旅館業法違反で摘発された。この事件は大きく報道されたが、その後警察庁が民泊に対する規制緩和について、なんらかの意向を持っているのかが、よくわからない。これは不思議な状態である。
旅館業法で定める旅館やホテルに関するさまざまな規制は、宿泊者の安全を守るという目的が第一であろうが、実際には治安維持のために必要な部分もある。例えば、宿泊者名簿の記載義務と提出義務。現状、警察官は裁判所の令状はもちろん、捜査関係事項照会書の交付を行うことなくホテル等の宿泊者名簿を閲覧できる。これについて、個人情報保護法は適用されないとされる(H26.12.19健衛発1219第2号通知文書)。
ところが現状の民泊では、警察は「誰がどこに泊まっているのか」ということが把握できない。テロリストや振り込め詐欺グループ、あるいは反社会勢力が民泊を利用して犯罪行為を画策しても、これを予防することに困難をきたす状態なのだ。