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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

結局、年金運用はリスクを取るべきか取らざるべきか? の前に知っておくべき最重要点

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表

 もちろん、これからは少子高齢化の時代が続きますから、今までのようにはいきません。毎年の払い込みと支払いがトントンならまだ良いほうで、支払うほうが多くなることが増えるでしょう。実際、毎年の年金収支のバランスを見ると、やはり出ていくほうが多く、それを穴埋めするために今ある134兆円というお金が使われるのです。

 今のところは毎年4~5兆円くらいが使われているようです。つまり、この134兆円の年金積立金は、毎年の年金の支払い原資というわけではありません。いわば貯金ともいうべきもので、毎年の収支が赤字の時にここから穴埋めするためのものと考えたほうがいいでしょう。したがってこの134兆円は、あまり大きなリスクをとらずに安定的に管理・運用して、大きく増やすというよりは減らないような運用を中心に考えるべきです。

企業年金の構造

 一方、企業年金というのは極端にいえば「給料の後払い」ともいうべきものです。将来社員が退職した後に支払えるように、会社が積み立てておく仕組みです。ただし、社員が入社した時から積み立てていきますから、実際に支払うまでの間、何十年もあり、その期間は一定の利回りで運用できるという見込みで積み立てる金額を決めるのです。

 仮にその見込みを0%とした場合、企業はかなり多くの金額を積み立てなければなりませんが、3%で運用できるという見込みの場合であれば、運用益で増える分がありますから積立金額は少なくなります。

 ところが、目標とする利回りに届かなかった場合は、その分を会社が穴埋めしないといけません。したがって、企業年金の場合は決められた目標利回りで運用しなければならないというプレッシャーがきつくなります。日本では1990年代以降に運用環境が悪化したために企業年金がピンチを迎えたのも、こういう背景があるからです。

 すなわち、公的年金は仮に毎年の収支がバランスされているのであれば、積立金は大きなリスクをとって運用しなくても良いのに対して、企業年金の場合は常に目標利回りを達成するために積極的な運用をしていかなければならないということになります。

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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