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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

結局、年金運用はリスクを取るべきか取らざるべきか? の前に知っておくべき最重要点

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表
結局、年金運用はリスクを取るべきか取らざるべきか? の前に知っておくべき最重要点の画像1「Thinkstock」より

 以前、ある人から質問を受けたことがあります。年金に関する質問です。

「大江さん、最近、年金運用で損失が出ているという話を聞いて思ったのですが、年金というのは老後に受け取って、老後の生活を支える大切なものですよね。だったら、あまりリスクの高いもので運用しないほうがいいのではないかと思うんですよ。でも、将来ひょっとしてインフレになるかもしれないというリスクを考えた場合は、やはりある程度のリターンが期待できるものでリスクをとって運用しないといけないし……。一体、どちらが正しいのでしょうか?」

 実にもっともな質問です。ただ、この答えを言う前にひとつ知っておくべきことは、「年金」と一口に言っても、「公的年金」と「企業年金」はまったくその仕組みが異なるものだということです。あえて誤解を恐れずに極論で言ってしまうと、公的年金は「運用する必要がない」ものですし、企業年金は「運用しないといけないもの」です。

 別な言い方をすれば、公的年金は将来にわたってお金が入ってくることがほぼ確実なのに対して、企業年金は確実ではない、と言い換えればいいでしょうか。もちろん、ここで言っていることは物事をシンプルに説明するための極論、暴論に近いことです。細かい点では「それは違う」という点はたくさんあると思いますが、それはご容赦ください。

公的年金の構造

 では、もう少しわかりやすく説明しましょう。公的年金というのは社会保障制度です。「老後の生活を、国や企業や個人がみんなで支え合っていきましょう」という考え方に基づくものです。今その保障の恩恵を受けている人たち、すなわち65歳以上の人たちに支払われている年金は、今の現役の人たちが払っている保険料と国が負担している分とを合計したものです。つまり、原則はその年に払い込んだ保険料がその年に年金として支払われているという「単年度決済」の仕組みになっています。

 これなら日本人が絶滅したり、極端に減少したりしない限りは支払うための原資は確保されます。それに、もともと国の年金制度ができた時は、今と違って保険料を受け取る人よりも支払う人のほうが圧倒的に多かったため、単年度で年金を支払ってもずっとお金は余ってきたのです。そうやって余ったお金を今まで積み立ててきて、その残高が今年の3月末時点で134兆円(年金積立金管理運用独立行政法人<GPIF>の運用資産)あるというわけです。

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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