東京都区部では平均年収の10倍を超える
マンション価格が上がって高くなりすぎると、当然のことながら売れ行きにブレーキがかかります。この1年ほどの首都圏の新築マンション市場動向がそれをはっきりと物語っています。このところの契約率は好不調の目安といわれる70%を切る月が多くなっているのです。
2015年の平均価格を都県別にみると、東京都区部は6732万円、神奈川県4953万円、埼玉県4146万円、千葉県3910万円でした。
一方、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、15年の東京都の平均年収は約624万円、神奈川県は約544万円、埼玉県は約477万円、千葉県約488万円ですから、東京都区部だと年収の10.8倍、神奈川県9.1倍、埼玉県は8.7倍、千葉県は8.0倍です。これでは、平均的な会社員ではとても手が出ません。売れなくなって当然でしょう。
先行き見通しが明るければ売れるが
それでも、経済の先行き見通しが明るく、5年後、10年後には収入が増えて住宅ローン返済もラクになるといった自信を持つことができれば、苦労してでもマンションを手に入れようと思うものです。
でも、残念ながら今はそんな情勢にはありません。収入が上がるどころか、どうかすると減ってしまう不安が強いですし、その一方で子どもの教育費などは安くなりません。むしろ、少しでもいい教育を受けさせて、いい大学、いい企業に入れるためにかかる費用は膨らむばかりです。
これでは、ますますマンションは売れなくなりますから、不動産会社としてはなんとか対策を練って、少しでも売れるようにしなければなりません。
売り上げ確保のためにできることは限られている
高すぎるから売れない――であれば価格を下げるのがもっとも確実な方法ですが、現在のように地価が上がり、建築費も高止まりしている状態では下げられる要素は限られています。住宅の性能を落とすわけにはいかないので、選択肢としては企業努力による経費の削減、そして専有面積の圧縮といった策に限定されます。
企業努力による経費の削減は、バブル崩壊後の多くの企業が徹底しており、これ以上に絞れないところまできています。まして、景気をよくするためにも賃金の引き上げの必要性が叫ばれており、人手不足も深刻ですから人件費を下げるわけにはいきません。となると、残る選択肢は専有面積の圧縮しかありません。