私は主に首都圏の新築マンション市場について、「資産価値レポート」という有料のレポートをインターネット上で販売している。そのタイトルのひとつが「東京の大規模マンション」。そこで取り上げているのは、東京都内で販売されているすべての新築マンションのなかから、
(1)総戸数が200戸以上
(2)タワーマンションではない(19階建て以下)
のものを選び、物件ごとに資産価値を分析する内容だ。
このレポートを5月の18日に最新情報化した。今回分析したのは37物件。この物件数自体も、私がこのタイトルでレポートを作成してきたこの8年間でもっとも多いほうだ。
しかし、私が異常だと感じるのは、このうちの21物件が「完成在庫」であることだ。完成在庫とは、マンションの建物がすでに完成しているのに販売が続いている状態。新築マンションを開発・分譲するデベロッパーからすると、各案件は竣工前から販売を始めて建物が完成した直後に決済・引き渡しを行うのが理想とされる。なぜなら、完成直後にすべての販売代金を回収することで、用地取得や建築費などのために金融機関から借り入れた事業資金を全額返済できるからである。もちろん、そこで利益も得られる。この返済が延びれば、それだけ多くの金利を払わなければならない。利益も減る。だから多くのデベロッパーは、建物の完成時点までの全戸完売を目指す。
ただ、一部のデベロッパーは「竣工後数年かかろうと値引きせずに販売する」という事業方針を採用している。そういったデベロッパーが開発・分譲する新築マンションは、竣工後数年にわたって販売が続けられる。しかし、それは全体からみれば一部だ。
ところが、前述した37物件のうち、現状で半分以上の21物件が完成在庫になってしまっている。また、半年から1年後にはさらに増えそうである。これは私の経験値の範囲で、かなり異常だ。
同レポートで取り上げているのは、だいたいが郊外型ファミリーマンションになる。都心のように投資や資産形成目的ではなく、中堅会社員が実際に住むために購入するタイプのマンションだ。そういったマンションが、恐ろしいばかりの販売不振にあえいでいる。
郊外ファミリー族の消滅
では、その原因はいったいなんであろうか。