元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きなことわざは「統括も調査の誤り」です。
今年は新型コロナウイルスに関連して、さまざまな助成金や給付金、無担保融資が実施されました。多くは法人や個人事業者のためのものでしたが、会社員であっても「雇用調整助成金」などの恩恵を受けているかと思います。
事業者の逼迫した状況は、個人事業者であるぼくもよくわかります。売上が大きく下がって事業継続が困難になっても、行政の支援で助かる方が大勢います。だから、要件の異なる女性や補助が複数実施されて、とても感謝しています。これらが自分だけでなく、困窮している事業者の方々に行き渡ることを願っています。
もっとも簡単で新しい給付金は「持続化給付金」で、これは既存の制度ではなく、コロナウイルスの蔓延によって創設された新制度です。突貫工事であることが容易にわかる制度設計でしたが、複数回の改善によって2020年から事業を開始した人などにも対応し、とても良いものになったと思います。
しかし、制度黎明期であることにつけ込んで、不正を行う輩が大勢います。12月6日の報道時点で、64億3700万円の給付金の返還があったことが明らかになっています。最低でも延べ6437人が詐欺に加担している計算になります。確定申告に詳しい人間であれば容易に不正を行える制度であったため、税理士や公務員の不正も目立ちました。
逮捕者は連日公表されています。逮捕者の実名が報道され、不正受給の認識がなかった若者などが返還や相談を行ったことで、不正の中心人物が次々と逮捕されたのかもしれません。
もし、この記事をご覧の方で、個人事業者でもないのに、誰かに話を持ちかけられて持続化給付金を受給した方は、必ず制度の窓口などにご相談ください。
芸人に対しLINEで行われる不正受給の勧誘
実は、元芸人が不正受給に加担しているらしいとの話を、同期の芸人から聞きました。元芸人は、LINEグループで「持続化給付金の手続きを知り合いがやってくれるねん。必ず100万もらえるみたいやで。ただ、20%の手数料はもらうけど」といった勧誘を行っていたそうです。
芸人は皆、個人事業者なので、持続化給付金がもらえる可能性は高いと思いますが、給付金額は前年と今年の売上から算出されるため、「必ず100万円もらえる」という謳い文句は、不正受給につながることを示唆しています。
ぼくの知り合いは全員無視したそうですが、社会経験の乏しい若者なら騙されてしまうのかもしれません。
また、受給詐欺を行う人間のLINEでの様子が、ぼくのTwitterアカウントに送られてくることもありました。一般市民のすぐ近くに、詐欺を行う人間がいるようです。残念ながら、ぼくは取り締まる立場にはないので、真偽を確かめて情報を流布するくらいしかできません。警察の捜査の進展を願うばかりです。
行政書士へ依頼すると料金はどのくらい?
給付金を受け取るための手続きを行う時間がない方や制度が理解できない方は、申請を代行している行政書士を探しましょう。インターネット上で情報発信している人もいるので、すぐに見つかります。
ぼくの知り合いの行政書士は、申請のすべてを依頼すると20%、一部でも10%の手数料を頂戴していました。ただし、持続化給付金詐欺を行っていた人物のなかに税理士がいたように、有資格者であったとしても善良な人間であるとは限りません。
知り合いのテレビ作家は100万円の持続化給付金に対し、行政書士から見積もりで60万円を提示されていました。これは異常な金額です。持続化給付金の制度については、開始前からかなり詳しく調べていますが、その手続から判断して60万円は社会通念上相当な金額ではありません。
行政書士側が依頼を断りたいと考えて設定した金額かもしれませんが、そうでなければ、無知を利用する悪質な業者の可能性もあります。面倒ですが、相見積もりをするといいと思います。
さまざまな制度が設けられた2020年。もしかしたら、あなたが受けられる給付がまだあるかもしれません。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)