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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

「長寿貧困」回避で大注目の「トンチン年金」は入るべき?高齢者も加入可、死ぬまで支給

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
「長寿貧困」回避で大注目の「トンチン年金」は入るべき?高齢者も加入可、死ぬまで支給の画像1「Thinkstock」より

 前回は、長生きリスクとトンチン年金の概要についてご紹介してきた。今回は、トンチン年金のメリット・デメリットを見ながら本質的な意義について考えてみたいと思う。

「トンチン年金」のメリットは?

「長寿貧困」回避で大注目の「トンチン年金」は入るべき?高齢者も加入可、死ぬまで支給の画像2『親の介護は9割逃げよ:「親の老後」の悩みを解決する50代からのお金のはなし』(黒田尚子/小学館)

 トンチン年金の最大のメリットは、長生きリスクに対応できること。

 かんぽ生命の「長寿のしあわせ」のみ年金受給期間最大30年の有期年金となっているが、それ以外の商品は、亡くなるまで年金が受け取れる終身年金(日本生命の「グランエイジ」と第一生命の「ながいき物語」は確定年金もある)である。一定年齢以上長生きすればするほど、オトクになるしくみだ。

 設定可能年金額は商品や年金開始年齢などによって異なるが、最高3,000万円までの高額設定も可能。もちろんその分保険料も相当な額になるので、実際には公的年金を補完する上乗せ年金的に契約されるケースが多いようだ。

 しかし極端なことをいえば、トンチン年金を契約しておけば、所定の年齢まで長生したとしても、それ以降、決められた年金が一生涯受け取れるわけだから、それまでに手持ちの預貯金を使い果たしてもよいということになる。

 となると、リタイアするまでに準備しておけばよいのは、トンチン年金の受け取り開始年齢までに必要な金額のみで済む。リタイア後も安心して預貯金などを取り崩すことができる。もちろん、ストックが十分にあれば、これらの保険に加入する必要もないのだが、高齢になると不動産や株式などは管理や処分などが予想以上に大変だ。それに対して、定期的にフローとして入ってくるなら、それを使ってもまた次があると思えば安心だし、使い勝手も良い。

「トンチン年金」でライフプランの常識が変わる?

 要するにトンチン年金を上手に活用すれば、経済的な見通しや計画がしやすくなるわけだ。まさに、従来のライフプランの考え方を根本から変えてしまう商品となり得る。トンチン年金を取り扱う保険会社の担当者によると、トンチン年金に加入したのは、50代など、これから本格的に年金を準備しようと考えている人以外に、すでに年金生活に入っている60代も少なくないという。

 この方々は、現役時代に10年や15年など有期型の個人年金で老後資金を準備しているケースが多い。そうなると75歳前後で収入が公的年金のみとなるため、その年齢が近づくにつれ経済的不安に駆られ出す。トンチン年金は、いずれの商品も告知や医師の診査なしでも申し込みできるので、持病があっても問題なし。高齢者でも加入しやすい(といっても、商品の特性からすれば、病気がちな方は加入しづらいだろうが……)。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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